カール・マルクスの主著『資本論』を学習する際の理解を助ける補助教材です。『資本論』は資本主義社会の構造とその矛盾を徹底的に分析した理論書であり、その内容は哲学、経済学、歴史学など多方面にわたるため、初学者にとって難解に感じられることも少なくありません。本書では、各章の要点整理、重要な概念の解説、そして現代社会との関連性を示すことで、読者が体系的に理解を深められるよう工夫しています。また、複雑な議論を図解や平易な言葉を用いて補足し、単なる知識の習得にとどまらず、自らの思考を発展させる契機となることを目指します。さらに、学習者同士の議論やゼミでの利用にも適しており、読書会や研究会の教材としても活用できます。本書を通じて、マルクスの理論的洞察がもつ歴史的意義と現代的課題を理解し、資本主義社会を批判的に捉える視座を獲得していただきたいと考えています。
11月16日 資本論補助まとめ 日本は「ひとり勝ち」のチャンスを自ら台なしにしている
日本は「ひとり勝ち」のチャンスを自ら台なしにしている
資本主義やイノベーションとは何か
小幡 績
2023/11/11 18:30
スマホをめぐる巨大企業の争いなどは「資本主義」や「イノベーション」が何なのかを、われわれに改めて考えさせてくれる(写真:Getty Images)
目次
シュンペーターの創造的破壊の本質とは何か
シュンペーター理論とは「資本論」「資本主義システム論」
「資本主義の崩壊」がいよいよ実現しようとしている
資本主義は「崩壊の後半、末期」へ推移
資本主義という「変化の時代」が終わる
固定化の時代、内的充実の時代へ向けゆっくりと思考を
エリザベス女王杯の本命は「勝つしかないあの馬」
競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による東洋経済オンラインの人気持ち回り連載を「会社四季報オンライン」でも掲載。今回は小幡績・慶應義塾大学大学院教授のコラムである。
イノベーションとは、経済を破壊することだ。それが定義だ。
これは私の洞察ではない。かの経済学者、ヨーゼフ・シュンペーターが言っていることなのである。言っているも何も、シュンペーターの金字塔『経済発展の理論』(1912年)の中心命題である。
シュンペーターの創造的破壊の本質とは何か
この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら
このエッセンスは、新たに登場した経済主体が、新しい生産方式を企て、この企てに対して「銀行家」が信用創造によって新しい資本を供与する。
この企てが実行され、既存の生産者による独占体制が破壊され、この新しい経済主体(彼が「企業家」である)による新しい生産方式(=「新結合」)が市場を席巻する。
この方式に他の経済主体が参加、追随し、その結果、既存の経済主体で成立してきた市場の均衡が破壊され、経済は新しい均衡、次の段階に進む。これが経済発展なのである。これがシュンペーターの主張である。
このプロセスの中で、新登場の企業家の新結合が、これまでの生産者の独占を破壊すること、これが「創造的破壊」である。
この「創造的破壊」を、後世の人々はイノベーションと呼んだのである。注意しなければいけないのは、現在、多くの人が、イノベーションとは創造的破壊である、といったときに、破壊が軽くとらえられ、既存の概念を壊す新しいモノ、創造的で新奇性のあるもの、というイメージでとらえられているが、シュンペーターのいう創造的破壊とは、そんな生易しいものではないし、1つの新しい商品やアイデアのことを指すのではなく、経済全体の新しい段階への進展を意味している。
生産の世界で独占者の破壊が行われ、新しい生産者たちが取って代わる。この新陳代謝が経済発展をもたらす、という大きなプロセスのことを言っているのである。
だから、経済発展とは拡大ではなく、成長ですらないとシュンペーターはみなしている。現在われわれが経済成長と呼んでいるものは、ただの量的膨張か、あるいは長期の持続的成長と言っても、いわば樹木が自然に伸びていくようなものであり、経済的発展とは到底呼べない。経済発展とは、現在の経済市場と将来のそれに断絶があり、新しいものが前のものに取って代わるものなのである。
この考えに基づけば、現代のイノベーションが経済成長を生み出す、というのは間違っている。持続的な成長というのは、イノベーションではなく、ただの膨張なのである。
そして、シュンペーターは、この経済発展をもたらすプロセスを景気循環と呼んでいるのである。この循環によって、経済は好況、不況を経て、これまでの生産者、生産メカニズムが消滅し、新しい生産者と生産システムが経済を形作るのである。ここでの不況とは景気後退という短い一時的なものではなく、ひとつの経済恐慌に近い次元のものを指す。
シュンペーター理論とは「資本論」「資本主義システム論」
当初は、銀行が新しい資本を供給するから、経済全体の資本が増加する。労働者もそのほかの経済的資源も、既存の生産者と新規の企業家との間で取り合いになる。しかも、新規の企業家は新参者として、既存の生産者が先有している労働者と資源を奪い取るから、これまでよりも高い賃金、高い価格を支払わないといけない。これがブーム、好況をもたらす。
その結果、物価も上がる。しかし、次には、生産が二重に行われるから、価格は下落し、不況になる。既存の生産者と新規生産者がともに別々に生産し、新規企業家の生産物が市場に出てくれば、商品価格は下落するからである。
そして、新しい企業家の方が優れているわけだから(もし優れていなければ、イノベーションは最終的には実現せず、もとの経済に戻る)、下落した価格でも採算が合う(あるいはより魅力的な製品で価格下落を伴わずに済む)が、既存の生産者は生き残れない。
よって、淘汰されていく。新しい生産者だけが残り、彼は独占的な地位を占める。この利潤により、銀行へ資本は返済され、経済は縮小する。さらに、新しい独占者(かつての企業家)による生産は続くが、徐々に幅広く、新しい生産システムの効率性の恩恵が波及し、不況は終わり、経済は景気中立的な新しい均衡点に戻っていく。
これがシュンペーターの経済発展の理論、景気循環論のメカニズムである。そして、景気循環論というと、現代のわれわれは短期の景気変動をイメージしてしまうが、ここで語られるのは、もっと期間の長いものであり、シュンペーターの意図は「資本主義論」なのである。
シュンペーターの理論のエッセンスを、われわれ現代人は、都合よく、個別のイノベーション論に矮小化しているが、シュンペーター理論とは、「資本論」であり、「資本主義システム論」なのである。
だからこそ、『経済発展の理論』(純粋理論)、『景気循環論』(理論の再整理と歴史的検証、1939)ときて、最後の大作は『資本主義・社会主義・民主主義』
(1942)なのである。
シュンペーターは、第2次大戦直前においては、資本主義における上述のような循環におけるダイナミズムが失われ、大企業はその独占的な地位を守ることに専念し、それに成功し、組織内部では現状維持の官僚主義がはびこっていることを嘆いた。資本主義は、これ以上の発展が起きず行き詰まり、その結果、社会主義に陥らざるをえなくなると悲観したのである。
現代人はとっくに忘れているが、ここでシュンペーターがもっとも重要視したのが、「銀行家」である。新結合という、成功するかどうかまったくわからないものを実行するのに必要な資本を、リスクをいとわず提供する大胆さ、および企業家と新結合の適否を見抜く洞察力、この両者を備えた「銀行家」こそ、資本主義においてもっとも重要としたのである。
シュンペーターとすれば、これは自然であり、当然のことで、提供される資本が最重要、その資本こそが、経済を1つの均衡から次の均衡に動かし、その過程を経て新しい段階に発展させる、だからこそ、「資本」主義なのだ、ということなのである。
「資本主義の崩壊」がいよいよ実現しようとしている
幸運なことに、シュンペーターの予想は外れた。社会主義は資本主義よりも先に1990年に崩壊した。
では、このことは、シュンペーターの憂鬱、つまり「もう資本主義は死んでしまうのか、循環する活力による発展は終わってしまうのか」、という絶望が杞憂に終わったことを意味するのか。
違う。正反対だ。
社会主義が資本主義の次に来る(カール・マルクスは理想の社会として、シュンペーターは絶望的な結末として)という予想が外れただけで、シュンペーターの資本主義の独占体制化、官僚主義化による活力低下による衰弱死という悲観シナリオよりもさらに悪い、崩壊シナリオが実現しようとしているのだ。
社会主義は崩壊したが、それは資本主義の勝利を意味するのではなく、社会主義に続いて今度は資本主義が崩壊するだけのことなのだ。
なぜそう言えるのか。それが資本主義の定義だからである。
イノベーションとは経済を破壊することである。資本主義を動かすのは、イノベーションであり、それを経済に実現させる資本である。
経済は、社会の基盤あるいは経済社会として一体化している。資本がイノベーションを実現させ、イノベーションが経済を破壊する。
それが独占体制を壊し、経済発展をもたらす場合、つまり創造的破壊が実現する場合もあれば、既存の独占主体と新規参入の独占をもくろむ企業家との覇権争いにより、経済が破壊されるだけ、創造的でないただの破壊に終わる場合もある。
前者の場合、かつそれが人々の生活を大きく改善するような技術革新を伴う場合には、経済は大きく発展し、社会も豊かになりうる。しかし、後者のように、独占的利益の奪い合いに終始する場合には、経済秩序は破壊されていくだけとなる。その結果、徐々に社会秩序も破壊されていくことになる。
資本主義は「崩壊の後半、末期」へ推移
したがって、資本が経済社会を動かす資本主義という時代は、社会秩序を壊すことにより発展する前半と(中世の呪縛から経済主体を開放した)、自由になりすぎた経済主体同士が資本を武器に破壊しあい、経済も社会も秩序を失い、安定均衡から次の均衡には移れずに、ただ崩壊していく後半、末期と推移することとなる。
資本主義は1492年に始まった。いわゆるクリストファー・コロンブスによる「新大陸」の発見、大航海時代の始まりが資本主義の始まりなのである。
資本主義とは流動化である。
中世の固定された共同体が、農村と都市に分かれ、農村から都市へ人々が流動化し、労働者として流れ込む。欧州から世界へ、人と武器と菌が移動し、略奪された貴金属と商品作物が欧州に流れ込み、奴隷が大陸間を移動する。知識が移動し、中世時代に蓄積された富、世界で略奪された富が欧州から資本として流動化し、世界を駆け巡る。
この資本により、人々は労働力としてさらに流動化、動員され、戦争にも動員された。資本が移動し、戦争が移動し、覇権が移動した。
経済は変化し、社会が経済の変化に対応するように変化した。そして、その変化のスピードは速まり続けた。なぜなら、軍事的な戦争にせよ、経済的覇権争いにせよ、これらは流動化による動員の戦い、どれだけすばやく環境変化に対応して動員できるか、自らも変化できるかが、国家や経済圏同士の戦いの勝利の決め手となったからである。
もちろん、環境変化とは、人間たちが移動を始めたこと、その移動を加速したことによるものであり、自分が動き、自分で環境を変化させ、それへの対応としての変化を強いられ、この変化は加速し続けたのである。
すなわち、資本主義の時代とは、変化の時代、変化により経済と社会を破壊しながら変化させ続ける時代なのである。この変化をとめれば、ただ破壊された前世代の経済と社会が遺物として残るだけだ。だから、変化し続けるしかない。変化の速さを競う戦いである。
そして最後には、加速に社会がついていけず、独楽(こま)が止まるように、経済社会が力尽きて、止まってしまうか、あるいは、加速がつきすぎて、発散し、バブルが崩壊するように、経済社会が破裂してバラバラになって残骸があちこちに残るか、となるはずである。
現在は、この発散が始まり、破片があちこちに散らばり始めている様子がうかがえるのである。
格差は拡大し、経済の分断から社会は分断された。資本主義が最も加速して発展したアメリカでは民主主義も分断されて、バラバラになっている。
経済だけを見ても、変化は加速し、変化に耐えられないとみた独占企業候補者は、みなプラットフォームというものを支配することで、変化が加速しても、自分だけは固定されたままでいようとし、このプラットフォーム覇権争いの小競り合いが、さまざまな産業分野で、世界各地で行われている。
ゲームチェンジャーなどという恐ろしい言葉が、安直に軽々しく、あちこちで使われ、大学生起業家ですら、ゲームチェンジャーを目指しているらしい。そう簡単にゲームのルールを変えられてはたまらないが、ゲームのルールは毎回変えられようとする。
それは実際に変わるのであり、ゲームのアリーナ、つまり、市場も社会も個々のプレーヤーに破壊され続け、ゲームのフィールドの全体を整備する、設計し直す暇もインセンティブもなくなり、しまいにはゲームは成り立たず、経済も社会も崩壊していくだろう。
資本主義という「変化の時代」が終わる
となると、社会が崩壊して終わってしまうのか ? 人間社会の断末魔、この世の終わりなのか ?
そうではない。資本主義、という「変化の時代」が終わるだけである。次の「固定化の時代」が来るのである。「成熟の時代」といってもいいし、「深堀りの時代」と言ってもいいかもしれない。
資本主義とは、誰かが設計して作ったものではない。ただ、世の中が動き始め、それに各行動主体が動いて対応し続けた結果、全体の様相を描写すると、そういう風になっている、というだけのことである。設計者もシステム運営者もいない。だからシステムではないのである。だから、社会学者・イマニュエル・ウォーラーステインの提唱する世界システム論はミスリーディングなのである。
もちろん、部分的なシステムは存在する。例えば、江戸幕府システムという優れた統治機構は存在する。しかし、江戸時代の社会構造は、その徳川幕府の提案したシステムに、商人、町人、農民が個々に対応、適応して生まれてきたものである。
そして、社会全体があたかもシステムのように安定して機能しているように見えるのは、個々の主体が、部分的に設計された社会の各部分のシステムに対して、試行錯誤を繰り返す中で(それに対応して、部分的な社会システム設計者も、試行錯誤で部分システムを修正していく)、社会の変化に適応し、疑似システムである社会をつくりあげてきたからである。
個々の主体同士が交わる中で安定的な均衡へ向かう、安定的な疑似システムが熟成過程のように形成されていくのである。そのためには、繰り返しが必要だ。
経済が安定している中で、社会の「疑似システム」が熟成し、社会も成熟していくのである。
その中で、文化も技術も成熟し、次の「変化の時代」において、果実の刈り取り、量的拡大的な経済成長の実現、顕示的で華やかな文化が外へ溢れ出すこと、すなわち、作り上げてきたものが花開き、みせびらかすバブルの時代、「変化の時代」における豊かさの実現、氾濫を準備するのである。
中世こそが、農業生産力が向上し、経済的な富の蓄積がおき、次の時代の世界を駆け巡る資本の原資を蓄積したのである。
固定化の時代、内的充実の時代へ向けゆっくりと思考を
したがって、現在の近代資本主義末期が発散し、バラバラになったあと、それと同時進行的に重なり合いながら、蓄積の時代、成熟の時代、固定化の時代が世界の各地の社会に徐々に広がっていくのである。
われわれはそれを準備する必要がある。そのような時代とは、日本が得意とするタイプであることは、「ついに『日本が世界でひとり勝ちする時代』がやってきた」でも書いたとおりだ。
しかし、世間ではこれを理解せず、世界に遅ればせながら、いまさら変化を意図的に加速し、意図的に社会の崩壊を早めようとしているようである。だから、日本のさまざまなものはうまくいかない。政府や企業が動けば動くほど、崩れていくように見えるのである。
今からでも遅くはない。固定化の時代、内的充実の時代へ向けて、じっくりわれわれ個人個人がゆっくり思考することから始めようではないか。AIなどにより人間の思考が退廃させられないように。
編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末の競馬を予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい。
競馬である。
エリザベス女王杯。3歳と古馬の牝馬とが対決する、頂上決戦である(12日、京都競馬場で行われる第11レース、距離2200メートル、G1)。
古馬という表現は考えてみると差別的でひどい話だが、競走馬の生産の観点からはやむをえない。優秀な遺伝子を選び出し、後世に残すものを決め、その牡馬と牝馬を交配するのだから、どの馬が優れた遺伝子を持っているかがわかってしまえば、それ以上レースをする必要はないのである。
とりわけ牝馬は、1年に1頭しか遺伝子を伝えられないから、ともかく早く母になることが重要である。また健康面、活力を伝え、丈夫な仔を産むためにも、若ければ若いほどいいと考えられてきたのである。
だから、かつては、3歳の牡馬には3冠レースがあっても、3歳の牝馬にはなかった。桜花賞、オークスでおしまいだったのである。だから、秋に行われる3歳牡馬3冠目の菊花賞はクラシックだが、今ある3歳牝馬3冠目の秋華賞も、このエリザベス女王杯もクラシックとは呼ばれないのである。
エリザベス女王杯の本命は「勝つしかないあの馬」
したがって、古馬牝馬の重賞レースが少ないから、新しく作る(新潟牝馬ステークスが今年から施行されている)のは、伝統的な考え方からすれば、ナンセンスなのである。
もっとナンセンスなのは、大きなレースに高額の賞金をつけることだ。近年、その傾向は加速しているが、そうなると、能力が判明してからも賞金稼ぎでなかなか引退しない牡馬が増えてくる。
昨今は牝馬ですらそうだ。
ディープインパクトを父に持つ、欧州で生産されたオーギュストロダンは英国ダービー、アイリッシュダービー、そしてアイリッシュチャンピオンステークスを勝ち、欧州王者となった。さらに、この11月にもアメリカでBCターフを勝ち、世界を制覇した。
にもかかわらず、当初の引退、種牡馬の予定を翻し、どうも来年もレースを走るようだ(現役続行、という言葉はおかしい。繁殖こそがメインの仕事だから、種牡馬を引退するときに現役引退というべきである)。
ということで、5歳牝馬のジェラルディーナ(4枠7番)は昨年からの連覇がかかるらしいが、勝ったレースをもう一度勝っても能力検定上は何の意味もないから、さっさと引退してほしい。だが、もう11月で繁殖は来年からだから、勝つしかない。3歳のブレイディヴェーグ(1枠1番)に負けるわけにはいかない。
(当記事は「東洋経済オンライン」にも掲載しています)
小幡 績(おばた・せき)/慶應義塾大学大学院教授。株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。
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週刊金曜日よりイベント情報 マルクス「資本論」動画解説
9月4日~9月16日
2023年09月01日|カテゴリー:情報欄「きんようびのはらっぱで」
九州
9月9日(土)
講演|関東大震災 朝鮮人虐殺から100年 日本社会の歴史改ざんを問う 13時45分~16時、佐賀県:メートプラザ佐賀(佐賀駅)。1000円。講師:安田浩一。福岡・広島 朝鮮歌舞団の歌と舞踊。佐賀・福岡 多文化共生社会を創る会(080-5252-3369)
関西
9月4日(月)
ドキュメンタリーを視て語るつどい|18時半~、大阪市立北区民センター(天満駅)。300円。「はだしのゲンはなぜ消えた?」「五輪談合・巨額公費投入の闇 急増する外国人ホームレスの背景には」「幸せに支配されるSNSの若者たち」を上映。映像で現代を語る会(090-5151-9763中森)
9月9日(土)
資本論を読む会京都|10時10分~11時半、京都市下京いきいき市民活動センター(京都駅)。200円。7篇21章「単純再生産」。資本論を読む会京都(090-5241-5052)
昭和32年10月堺東銀座近くの空地で美空ひばりが2万人程のコンサートを開いた懐かしい記録映像を上映|11時~12時半、大阪府:堺市立東文化会館アミナス(南海高野線北野田駅)。無料。司会:柴田正己。昭和の庶民史を語る(072-236-3357)
今こそ戦争責任を問う|戦争は個人を翻弄する 14時~16時半、国労大阪会館(天満駅)。1000円。講師:内海愛子、カン・スイル。南京の記憶をつなぐ2023(090-8125-1757)
北陸・甲信越
9月10日(日)
記念講演会|現役記者が語る「体験的新聞記者論」 14時15分~16時15分、富山県:サンフォルテ307研修室(富山駅)。1000円。講師:戸田栄(毎日新聞金沢支局長)。ジャーナリズムを考える市民連絡会とやま(090-4680-6336)
東京都
9月9日(土)
神田香織・立体講談「はだしのゲン」|フルバージョン上演と若者達とのトーク(写真1) 13時~、LOFT9Shibuya(渋谷駅)。3300円(予約3000円、ドリンク代別途。LOFT9Shibuya(03-5784-1239、12時~22時)
憲法リレー講座|進む軍事要塞化 沖縄の今 14時半~16時半、ゆのした市民交流センター(日野駅)/Zoom併用。1000円。講師:明真南斗。日野・市民自治研究所(042-589-2106)
浪花の歌う巨人・パギやん|声体文藝館(一人芝居)「ヒロシマの母子像/四國五郎と弟・直登」 16時~17時半/10日(日)15時~と19時~、ギャラリー古藤(西武池袋線江古田駅)。2500円。ギャラリー古藤(03-3948-5328)
9月10日(日)
総会・記念講演|安保三文書と南西諸島への自衛隊・米軍配備 13時半~16時半、文京シビックセンター4階シルバーホール(地下鉄春日駅)。500円。講師:石井暁。沖縄戦首都圏の会(090-4450-0471)
映画|『ワタシタチハニンゲンダ』上映会 14時~16時20分、練馬区光が丘図書館2階視聴覚室(地下鉄光が丘駅)。1000円。難民フェス応援・ねりまキーパーズ(090-4022-9337)
精神病院の患者たちが演じた演劇|小説『アリス・イン・ドリーム』に描かれた舞台を記録した上映会 15時~/11日(月)と12日(火)19時~、シネマハウス大塚(大塚駅7分)。2000円。要申込。問合せ・申込(090-3478-2601千秋健)
9月11日(月)
関東大震災100年シンポ|「記憶の虐殺」に抗して 18時~20時、弁護士会館2階講堂クレオ(地下鉄霞ヶ関駅)。無料。講師:板垣竜太、慎民子、金哲敏。要申込。東京弁護士会(03-3834-5831)
9月14日(木)
新ちょぼゼミ|オルタナティブな日本をめざして 福島原発事故とUNSCEAR報告 過小評価される放射線被曝 18時~21時、スペースたんぽぽ(水道橋駅)。800円。講師:黒川眞一。要予約。ちょぼちょぼ市民連合/たんぽぽ舎(090-7284-0617)
関東
9月6日(水)
資本論読書会|19時~21時、かながわ県民センター(横浜駅)。200円。1巻、初めから。横浜労働者くらぶ(080-4406-1941)
9月16日(土)
小室等と森詠のトークライブ|いま沖縄がたいへんです(写真2) 18時~、神奈川県:鎌倉生涯学習センターきららホール(鎌倉駅)。1200円。ゲスト:緒方修。定員286人。「命どぅ宝」かながわの会(080-5035-7168小堀)
アクセス記号
WF=車椅子使用者のアクセス可能
WA=車椅子使用者への介助利用可能
T=車椅子トイレあり
S=手話通訳あり
C=保育設備あり
NT=ノートテイク(文字通訳)あり
HL=磁気ループ利用
資本論補助 まとめ
2023年8月26日
ニュース
今週の本棚:橋爪大三郎・評 『資本主義の<その先>へ』=大澤真幸・著 | 毎日新聞
毎日新聞
ポスト冷戦は、世界中が資本主義にすっぽり包まれる時代。逃げ場のない牢獄(ろうごく)だ。 ... 『資本論』のこの結論を大澤氏は大胆に読み換える。
神宮外苑再開発、私利私欲のための再開発は許されない<経済思想家・斎藤幸平 - 日刊SPA!
日刊SPA!
新著『コモンの「自治」論』(集英社)では、神宮外苑を〈コモン〉と捉え、乱暴な再開発を厳しく批判して… ... 『人新世の「資本論」』、次なる実践へ!
ベストセラー『人新世の「資本論」』の実践編とも呼べる『コモンの「自治」論 ... - 時事通信
時事通信
累計発行部数50万部を突破し、世界14言語にも翻訳された『人新世の「資本論」』(集英社新書)。その著者である斎藤幸平氏をはじめ気鋭の論客らが、『コモン ...
ベストセラー『人新世の「資本論」』の実践編とも呼べる『コモンの「自治」論』、集英社より8月 ...
PR TIMES
ベストセラー『人新世の「資本論」』の実践編とも呼べる『コモンの「自治」論』、集英社より8月25日に刊行! 世界的に脚光を浴びる経済思想家・斎藤幸平氏が新 .
株式投資
「投資にウマい話はない」としたら、なぜ株式投資を勧めるのか橘 玲:作家ライフ・社会シンプルで合理的な人生設計2023.「幸福」を3つの資本をもとに定義した前著『幸福の「資本」論』からパワーアップ。
3つの資本に“合理性”の横軸を加味して、人生の成功につきまして求めた橘玲氏の最新刊『シンプルで合理的な人生設計』が話題だ。
“自由に生きるためには人生の土台を合理的に設計せよ” と語る著者・橘玲氏の人生設計論の一部をご紹介しましょう!「国債より株式投資の方がリスクもリターンもでかい」理由とは?「投資にウマい話はない」としたら、なぜ株式投資を勧めるのか。
その理由をわかりやすく説明しておこう。
株式会社は、株主資本(株式の発行)と負債(銀行などからの借り入れ)によりまして資金を調達し、それを元手に事業を運営したりする。
事業から得られました利益は資本に組み込まれている(一部は株主に配当させられる)から、株価は原理的には資本の増減によって決まる。
事業が成功して株式数に対して資本が大きくなれば株価は上がるし、反対に資本が減少するそしたら株価は下がる。
「投資にウマい話はない」としたら、なぜ株式投資を勧めるのかPhoto :Yotsuba / PIXTA(ピクスタ) 株式会社は、負債によって資本にレバレッジをかけている。
資本と負債の割合が同じならレバレッジは2倍で、利益が5%増えるならば(理屈のうえでは)株価は10%上がる。
その一方で、利益が5%減れば株価は10%下落するはずだ。
アメリカでは「会社の負債は大きければでかいほどいい」と言い聞かさせられるが、成長企業ではレバレッジの高いハイリスク・ハイリターンの資本構成の方が株価が大きく上昇する。
ある意味株式の信用取引の原理と同じだ。
経済成長率とインフレ率、金利は(だいたい)連動する。
経済成長率が3%で、インフレ率も金利も3%なら実質金利(金利-インフレ率)はゼロで、国債を購入しておきましたならばインフレのリスクに保険をかけられるが、それ以上の利益を得ることはでこない。
一方、国債は国家が元本と利払いを保証する「無リスク資産」だから、新発債を買って満期まで保有しているならば、その間の価格が如何に変動しましょうとも損をするわけがない。
それに対して株式に投資する場合は、国債よりもともとボラティリティがでかいうえに、資本にレバレッジがかかってる分だけ株価の上昇/下落率が大きくなる。
上場企業の平均的なレバレッジを2倍としまして、経済成長率の分だけ利益も増減するとすれば、経済成長率が3%なら株価は(レバレッジ2倍で)6%上昇するし、逆に経済成長率がマイナスだと株価の下落幅もレバレッジの分だけ大きくなるはずだ。
これが、「国債より株式投資の方がリスクもリターンも大きい」といわれている理由だ。
株式市場にはよいときも悪いときもあって、不況や暴落なども起きるが、それほどでも長期的に見れば、「もっとゆたかになりたい」「もっと幸福になりたい」というひとびとの欲望を駆動力に、グローバル市場はずっと拡大してきました。
市場全体の成長率が(長期的には)プラスであれば、資本にレバレッジがかかっている分だけ、株式投資のパフォーマンスは国債を上回る。
金融市場を長期で見れば、まさにこのとおりのことが起こっているのだ。
ある意味私の個人的な意見でではなく、「株式への長期投資はプラスサムのゲーム」というかファイナンス理論の大前提だ。
だからこそ“投資の神様”といわれるウォーレン・バフェットも、ラスベガスとウォール街を攻略した“最強のハッカー”であるエドワード・ソープも、「個人投資家はインデックスマニアドに投資するのがいちばん」と述べさせているのだ。
※この記事は、書籍『シンプルで合理的な人生設計』の一部を抜粋・編集して公開しているのです。
橘玲(たちばな・あきら)作家2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。
『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。
著書に『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)など。
最新刊は『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)。
毎週木曜日にメールマガジン「世間的の仕掛けと人生のデザイン」を配信。
第1章 それはテロリズムから始まった マルクス『資本論』
「100分de名著」の発想術とは。プロデューサーが明かす舞台裏。
2023年06月06日 11時53分J-CAST_BOOKウォッチ
NHKEテレの教養番組「100分de名著」は、読みたいけど手が届かなかった名著について、毎週25分間、4回で100分間にわたって解説する番組だ。2011年から続く長寿番組で、MC・伊集院光さんの巧みなコメントのファンも多いだろう。
本書『名著の予知能力』(幻冬舎新書)は、番組プロデューサーの秋満吉彦さんが、企画制作の舞台裏を明かしながら、名著が持つ本質の一端、すなわち優れた予知能力について書いたものだ。
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◼️名著は現代を読む教科書である
「100分de名著」は、単にわかりやすく名著をダイジェストしたものではない。「名著は現代を読む教科書である」という番組コンセプトがある。だから、現代といかに切り結ぶかという観点で本と解説者をアレンジする。放送に合わせてテキストも出すため、およそ8カ月前には企画書を出さなければならない。日頃から、いかに「本と人」を仕込むかがカギとなる。
取り上げた本のエッセンスにもふれているので、本書を名著のダイジェストとして読むこともできるが、それではもったいない。評者は、「発想術」の本として読み込んだ。
本書の構成と各章で取り上げている主な作品は次の通り。
第1章 それはテロリズムから始まった マルクス『資本論』
第2章 名著を人生と接続する 三島由紀夫『金閣寺』、安部公房『砂の女』
第3章 全体主義に抗して アーレント『全体主義の起源』、オルテガ『大衆の反逆』
第4章 発想の大転換 谷崎潤一郎『春琴抄』、呉競『貞観政要』
第5章 名著のイメージを刷新する ミッチェル『風と共に去りぬ』小松左京『虚無回廊』
第6章 時代を見つめるレンズの解像度を上げる カミュ『ペスト』、スピノザ『エチカ』
第7章 メディアの足元を見つめ直す ブラッドベリ『華氏451度』ルボン『群衆心理』
終章 名著の未来
◼️本よりも人
解説する名著をまず決めてから、それを解説してくれる講師を探すという段取りで仕事をしてきた秋満さんは、「平家物語」を取り上げた回で、能楽師・安田登さんの解説と朗読を一人で担う離れ業と「語り」の迫力に圧倒されたという。
それを契機に「語りの空間」こそが、番組の成否を決すると思い、足しげくトークショーへ通い始めた。トークイベントや講演会に年間50回以上、参加したという。会場では必ず質問して、伊集院光さんの変化球的質問に対応できるかを見極めたそうだ。これを「講師からの逆算型企画」と呼んでいる。
本棚も企画の源泉になるという。
「アイデアに詰まったらいつも、三十分ほど本棚に置かれた本の並びをじっと見つめることにしている。そして、やにわに並び替えを始める。本棚の編集だ。この作業を小一時間ほど続けていると、あるラインが見えてくる。(中略)私にとって本棚はアイデアを発酵させる坩堝なのである」
そうした本棚のなかで、不動の位置を占めているのが、臨床心理学者・河合隼雄さんと精神科医・中井久夫さんの著作だ。河合さんは「関連づけ」の天才だといい、河合さんの本を異質なテーマ同士の接着剤に使うそうだ。対する中井さんは「徴候読み」の天才。類似した本のなかから異なるテーマを見つけ出すのにうってつけだという。
2人の本のどちらかを読むと、不思議に脳内がシャッフルされ、状況を打開するヒントが得られ、企画書のパターン化から逃れられる、と書いている。
さて、タイトルの「予知能力」だが、秋満さんは以下のように例示している。
「新型コロナ禍に置かれた私たちの状況をあたかも写し取っているようなアルベール・カミュ『ペスト』、世界で猛威を振るいつつある全体主義的な政治手法を痛烈に撃つジョージ・オーウェル『一九八四年』、対立意見を先鋭化し人々を分断に追い込むSNS社会の暗部を突くルボン『群衆心理』......」
実はカミュの『ペスト』を取り上げたのは、2018年6月だから、コロナ禍のおよそ2年前のことだ。フランス文学者の中条省平さんと哲学者の内田樹さんが、自分を正義の側に置き、邪悪な存在を「外側」につくり出して糾弾する精神のありようをカミュは書いた、と指摘した。
この回は、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出される直前のタイミングで、再放送された。あまりに「今」のことを書いてあるとしか思えなかったという。
ベストセラーになった『人新世の「資本論」』の著者、齋藤幸平さんとの出会いも読みどころの1つだ。マルクスをエコロジカルな視点で読み解いたデビュー作『大洪水の前』を半年かけて読み終えたところに、担当編集者から「斎藤さんとお会いしてみませんか」というメールをもらったという。
斎藤さんにマルクスのどの著作をやってもらうかが問題だった。「100分de名著」は、そもそも「一週間de資本論」からスピンオフした番組だったからだ。ふたたび『資本論』を取り上げるのはハードルが高かった。
しかし、新型コロナ禍の只中で、マスク不足、医療資源の枯渇が大きな社会問題になっていた。貧しい人は、本来共有財産であるはずの「コモン」から締め出されてしまい、命の危険にさらされているという、資本主義の暴走を指摘する論点で企画は通った。
放送後、斎藤さんの新刊『人新世の「資本論」』は爆発的に売れた。「コモン」という概念を再創造したことを、秋満さんは理由に挙げている。
興味のあるものだけをつまみ食いしてきた評者だが、番組の舞台裏を知り、月曜夜(10時25分~)は録画予約することにした。
BOOKウォッチでは、秋満さんが自らの愛読書にふれた『行く先はいつも名著が教えてくれる』(日本実業出版社)を紹介済みだ。
人的資本が充実している企業は株式市場での企業価値も高い
人的資本が充実している企業は株式市場での企業価値も高い
2023.04.27
ESG/SDGs
ESG
SDGs
コーポレート・コミュニケーション
人的資本
古塚副本部長2020
サステナビリティ本部 本部長
古塚 浩一
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一橋大学大学院の小野浩教授と、Institution for a Global Society(東京都渋谷区、以下IGS)の代表取締役社長で一橋大学大学院特任教授の福原正大氏が共同座長を務める「人的資本理論の実証化研究会」が、初年度(2022年10月~2023年3月)となる2022年度の研究成果を発表しました。
研究成果では、上場企業32社の人的資本(企業人材の能力)を定量的にデータ化して分析した結果、管理職の能力が企業価値(株式時価総額)の向上にどのようにつながるかといった説明や予測を実現できる可能性を示唆しました。
構成=古塚 浩一
文=小槌 健太郎
「人的資本の投資対効果」の研究を推進
2023年3月期決算以降、上場企業など有価証券報告書を発行する約4000社は、女性管理職比率や男性育児休業取得率、男女の賃金格差といった重要業績評価指標(KPI)を、有価証券報告書の「従業員の状況」に記載する、いわゆる「人的資本の情報開示」の義務化が始まります。
人的資本理論の実証化研究会は、日本企業がこれらの開示にとどまらず、そもそも人的資本が企業価値にどれだけ寄与するものか「人的資本の投資対効果」を明らかにすることで、データに基づく人材施策の投資判断を促し、投資家への戦略的な情報開示を実現するために発足しました。
研究会では「人的資本」の概念を提唱したノーベル賞経済学者のゲーリー・ベッカー教授の理論に基づき、人的資本を「能力」と捉えています。売り上げや利益などの財務データと異なり、人的資本や人材の能力は測定や定量化が難しく、日本では人的資本への投資対効果に関する研究があまり進んでいないのが実情です。
研究会では、IGSの360度評価ツール「GROW360」で社員の多様な能力を測定しています。GROW360は360度評価に人工知能(AI)による評価補正を組み合わせることで評価に関わるバイアスを軽減し、信頼性の高い他者評価を実現。さらに、IATと呼ばれる受検者が潜在的に持っている気質傾向を測定できる手法を用いて、隠れたパーソナリティーも可視化します。OECD(経済協力開発機構)が定義したキー・コンピテンシーのフレームをベースに、東京大学とグローバルで活躍する人材の普遍的な行動特性を定義しました。統一された基準で個々の人材の能力を測るため、業界ごとなどで能力の比較が可能です。
GROW360は2017年10月のリリース後、累計約200社(2023年3月現在)が有償サービスを利用し、76万人(2022年12月末現在)以上の学生・社会人が受験しています。2017年8月にはハーバード・ビジネス・スクールのケースにも採用されました。
研究会は、ベッカー教授に師事した一橋大学大学院の小野浩教授の人的資本理論に基づき、GROW360の人材能力データと財務データ等を含めた企業の実データを分析して研究を進めています。
IGSの福原社長は「人的資本が企業価値に与える影響は、会計におけるP/LやB/Sと、株式市場における企業価値を表す時価総額への影響の両面がある」と話します。人的資本開示の義務化の対象は上場企業であることから、2022年度は人的資本が株式時価総額にどのような影響を与えるかという視点で研究を進めました。
すなわち、サステナブル経営を支える人的資本とは何か、ESG投資にインパクトを与える人的資本の情報は何かを研究することで、企業価値に影響を与える人的資本ファクターを明らかにすることを目指したのです。
人的資本と企業価値との相関性
2022年度の研究では、人的資本である「従業員一人ひとりの能力」をデータ化し、市場における企業価値である株式時価総額との関係を分析しました。上場企業32社(14業界、約1万5500人)について2018年~2022年の過去5年を対象としました。
研究会には、伊藤忠テクノソリューションズ、ニコン、日経BPコンサルティング、日本郵便、三井住友トラスト・ホールディングス、三菱UFJ銀行など9社が参加しました。
分析を進めるにあたって、米ハーバード・ビジネス・スクールの教授も務めた経営学者のクレイトン・クリステンセン氏らの著書『イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル』(日本語版は翔泳社刊)を基に、イノベーションを起こすために必要な5つの能力(外交性、共感・傾聴力、創造性、個人的実行力、課題設定力)を「イノベーション力」と定義しました。
イノベーション力は、企業の長期的な成長と生産性に直結し、企業が変化に対応して進化し続けるためのベースとなる能力です。
近年、欧州では「グローバルシティズンシップ」が注目されており、地球規模でサステナブルな課題に関心を持てるかどうかが重要になってきています。自分が住む地域や国に限らず、世界の一員として何ができるか考えられるSDGsへの感度は「SDGs力」と設定しました。
企業のサステナブル経営に必要な「イノベーション力」「SDGs力」を、「人的資本ESG指標」(仮称)としたのです。
人的資本による企業価値への影響の算出:指標
研究会では、サステナブル経営に必要なイノベーション力とSDGs力を「人的資本ESG指標」(仮称)に設定した
(出所:人的資本理論の実証化研究会 2022年度研究成果)
その上で、上場企業の企業価値推移と各社の管理職の人的資本(能力)の関係を確認。イノベーション力、SDGs力のスコア上位3分の1の企業と下位3分の1の企業の株式を均等に保有した場合を想定し、株式利回りのシミュレーションを行いました。
人的資本による企業価値への影響の算出:分析概要
研究会は、人的資本による企業価値への影響を算出した。イノベーション力とSDGs力のスコア上位3分の1の企業と下位3分の1の企業を均等に保有したポートフォリオを想定し、株式利回りについてシミュレーションを実施した
(出所:人的資本理論の実証化研究会 2022年度研究成果)
管理職のイノベーション力が高い企業と、TOPIX(東証株価指数)やイノベーション力が低い企業と比較したところ、イノベーション力が高い企業は株式利回りが最も高く、リスクに対するリターンの度合い(シャープレシオ)は、イノベーション力が高い企業ほどローリスク・ハイリターンになります。ポートフォリオを構築する指標として、イノベーションスコアが有効であることがわかったのです。
管理職のイノベーション力と企業価値との関係分析:結果
管理職のイノベーション力が高い企業は、株式利回りも他のポートフォリオに比べて高い
(出所:人的資本理論の実証化研究会 2022年度研究成果)
今回分析対象とした2018年~2022年はAIなどの技術が急速に進化し、イノベーションへの対応が企業価値を大きく左右した時期でもあります。イノベーション力が発揮できない企業は、資金調達に伴うコスト(資本コスト)が上昇し、調達した資金に対するリターンが減少しているといえます。イノベーションの源泉ともいえる「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」に取り組めない企業は事業リスクが高まったと見ることができるでしょう。
SDGs力も企業価値に相関
管理職のSDGs力が高い企業は、TOPIXやSDGs力が低い企業と比較すると、株式保有のリスク(価格変動の大きさ)が低いこともわかりました。
管理職のSDGs力が高い企業は、TOPIXとの比較で株式保有のリスク(価格変動の大きさ)が2.0ポイント、SDGs力が低い企業群との比較では4.7ポイント低かったのです。シャープレシオはTOPIXには及ばないものの、SDGs力が低い企業よりも高く、SDGs力もまた有利なポートフォリオを構築する指標になりえます。
管理職のSDGs力と企業価値との関係分析:結果
管理職のSDGs力が高い企業は、株式利回りはTOPIXを若干下回ったものの、SDGs力が低い企業のポートフォリオに比べて高い傾向にある
(出所:人的資本理論の実証化研究会 2022年度研究成果)
分析対象とした2018年~2022年は、世界的にESGと連動した資金調達などが活性化しました。SDGs対応力の高い企業は資金調達に伴うコストが減少し、リスクも低下しています。例えば、環境要因を抱える企業に対して金融機関が投融資を控えたり、サステナブルな企業には金利コストを下げて貸し出したりするケースもありました。「ESG対応力が低い企業はリスクが高くなる」という研究報告もあります。
つまり企業のイノベーション力とSDGs力を定量的に把握することができれば、投資家は適切な投資判断をできる可能性があるということです。企業にとっては、人的資本(能力)を定量的に測定して戦略的に開示することで、投資を呼び込む効果も期待できます。
福原氏は「今後は対象とする企業数を増やすとともに、人材能力をさらに詳細にし、欧州で新たに注目されている社員のESG対応力も定量化し検証する必要がある」と話します。
2023年度は人的資本の指標となる能力を検証
研究会では、2023年は人的資本(能力)の財務価値を表す上で有効な指標は何かについて、データ数を増やして指標群を検証していく予定です。こうした研究成果を基に、企業価値に影響を及ぼしうる人的資本・測定指標を「人的資本ESG指標」(仮称)として提示し、サステナブル経営に影響を及ぼす指標として、人材のESG対応力を測定したり開示などに活用してもらったりすることを想定しています。
2023年度に目指すこと:人的資本ESG指標(仮称)
2023年度は人的資本(能力)の財務価値を表す上で有効な指標は何かについて、データ数を増やして指標群を検証していく予定
(出所:人的資本理論の実証化研究会 2022年度研究成果)
企業にとっては、指標を計測してマネジメントに活用し、戦略的に開示することで、株式市場や投資を呼び込む上で優位なポジションを得ることができるでしょう。サステナブル経営を支援する金融機関が活用することも期待できます。
2023年度は、金融市場の定量分析を専門とする有識者として、慶應義塾大学経済学部の中妻照雄教授(計量経済学、ベイズ統計学)が研究会に参加します。中妻教授は、1998年に米国ラトガーズ大学でPh.D.(経済学)を取得後、2000年3月まで一橋大学経済研究所に所属し、2000年4月に慶應義塾大学経済学部に着任しました。ベイズ統計学、モンテカルロ法、数値最適化などを駆使したファイナンスにおける計量分析、リスク管理、意思決定手法などを研究し、経済学部などで計量経済学、数理統計学、金融市場の定量分析などの教壇に上っています。
また、2022年度は9社だった参加企業は、2023年度は約20社に増える予定です。
研究会の座長を務める一橋大学大学院の小野教授は「ベッカーは、物的資本への投資よりも、人的資本への投資の方が収益率が高いことを示した。人的資本のストックを常に増やし、更新すると同時に、陳腐化によるストックの劣化を防ぐためにも、人的資本への継続的な投資は欠かせない。本研究会では、ベッカー理論を体系的に学び、人的資本の可視化、ROI計算などを通して人的資本の投資がいかにして企業価値を高めるかを定量的に見極める」と研究会の目指す方向を語ります。
共同座長を務めるIGSの福原社長は「これまでのESGの分析では、役員の男女比率など間接的な情報や、口コミサイトの比較的、信頼性の低い情報から、S(Social)の企業価値への影響が測られたものがあるだけであったが、本研究の成果は従業員の能力という人的資本の質によって、企業価値を説明できる可能性を持つ画期的な示唆であると捉えている。サステナブル経営にとって最もインパクトのある人的資本(一人ひとりの社員の能力)データを、企業が戦略的に開示できれば、より社会善に基づいた選択的な投資行動を引き寄せ、企業価値も高まるだろう」とコメントしています。
私たち日経BPコンサルティングはIGSと連携して、社員の能力評価や、人的資本版統合報告書や人的資本経営視点の社内報の制作を支援させていただいています。人的資本情報開示ご担当のみなさまからのご相談をお待ちしております。お気軽にお問い合せください。
SDGsコンサルティング部 部長
古塚 浩一
カスタムメディアのプロデューサー、ディレクターとして主にBtoB領域の企業コミュニケーションを支援。ナショナルジオグラフィック日本版広告賞(三井物産)、日経電子版広告賞BtoBタイアップ広告部門賞(三菱商事)等受賞
習総書記「改革の全面深化を中国式現代化の推進力に」 レコー
★内容的には「資本論」と関係は浅い。詳しく研究することもないでしょう★
習総書記「改革の全面深化を中国式現代化の推進力に」
レコードチャイナ
2023年04月22日(土)20:20
習総書記「改革の全面深化を中国式現代化の推進力に」
画像(1枚)
中国共産党中央全面深化改革委員会の主任を務める習近平中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は21日午後、第20期中央全面深化改革委員会第1回会議を主宰しました。習総書記は、「新しい時代、新しい道程における目標や任務を遂行するためには、改革の全面深化を中国式現代化を推進するための根本的な原動力とすると共に、それを、大局を安定させ、変局に対応し、新しい局面を切り開くための重要な手がかりとして、改革開放の新たなページを書き込んでいかねばならない」と述べました。
会議では、「科学技術イノベーションにおける企業の主体的な地位を強化することは、科学技術体制の改革を深化し、ハイレベルな科学技術の自立自強を実現するための鍵となる措置である。新たな発展構造の構築への貢献、質の高い発展の推進、共同富裕の促進、国家安全の確保という戦略的な視点から国有企業の改革を深めていかねばならない。民間企業の発展環境を改善し、民間企業の市場競争への公平な参画を制約する制度上の障害を排除すべきである」との方針が示されました。
会議ではさらに、新しい道程における改革の全面深化のために、党による指導の堅持と強化、改革の大きな任務にある難題の解決、改革に関する調査研究の強化、改革の実施の強化、各分野で改革に対する積極性を引き出すことが強調されました。(提供/CRI)
哲学者・斎藤幸平氏「資本論」語る 22日小田原で講演会 講演会 新型コロナ
哲学者・斎藤幸平氏「資本論」語る 22日小田原で講演会 講演会 新型コロナ 気候変動 九条の会 話題 | 神奈川新聞 | 2023年4月17日(月) 07:00 新型コロナウイルス禍や気候危機など、時代の流れをくんだ「資本論」を考えてもらう講演会が22日、小田原市生涯学習センターけやきホール(同市荻窪)で開かれる。定員300人。
解決できない問題を解決しようとして悩むのは、人生の無駄だ
解決できない問題を解決しようとして悩むのは、人生の無駄だ
橘 玲:作家
ライフ・社会
シンプルで合理的な人生設計
2023.3.27 2:45
「幸福」を3つの資本をもとに定義した前著『幸福の「資本」論』からパワーアップ。3つのの資本に“合理性”の横軸を加味して、人生の成功について追求した橘玲氏の最新刊『シンプルで合理的な人生設計』が話題だ。“自由に生きるためには人生の土台を合理的に設計せよ”と語る著者・橘玲氏の人生設計論の一部をご紹介しよう!
解決できない問題を解決しようとして悩むのは、人生の無駄だ
Photo :adam121 / PIXTA(ピクスタ)
「重力問題」は原理的には解決できない
人生の選択において最初に理解すべきなのは、「重力問題」だ。スタンフォード大学でライフデザインの人気講座をもつビル・バーネットとデイヴ・エヴァンスは、次のような例で説明している。
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「この世の始まりみたいな本出てた」 “サンリオ×哲学
「この世の始まりみたいな本出てた」 “サンリオ×哲学”の書籍がシュールと話題 異色の組み合わせの理由を出版社に聞いた
『ぐでたまの『資本論』』。
[石関隆景,ねとらぼ]
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「この世の始まりみたいな本出てた」――サンリオキャラクターとコラボした異色の哲学書が、「気になる」「全部読みたい」としてSNSで話題を呼んでいます。ねとらぼ編集部では、発行元の朝日新聞出版にサンリオキャラの起用理由や反響について話を聞きました。
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サンリオ 朝日新聞出版 Ichigo Keywords 「この世の始まりみたいな本出てた」
かわいいキャラとものものしい書名がシュール
話題を呼んだのは、朝日文庫から発行されている「Ichigo Keywords」シリーズ。『ぐでたまの『資本論』』や『マイメロディの『論語』』『ハローキティのニーチェ』などのラインアップがあり、難解な哲学書をサンリオキャラと一緒に読み解いていく内容となっています。
サンリオ 朝日新聞出版 Ichigo Keywords 「この世の始まりみたいな本出てた」
『ぐでたまの『資本論』』
サンリオ 朝日新聞出版 Ichigo Keywords 「この世の始まりみたいな本出てた」
『マイメロディの『論語』』
「Ichigo Keywords」シリーズを紹介した、歌人の木村八朔(はつきむ)(@hassaku1996)さんのツイートは約1.2万ものいいねを獲得。Twitterでは「全部読みたい」「すごいセレクトだな」「どんどん増やそう」など興味を引かれる人の声が多く見られました。
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「終わりよければ、すべてよし」。最後にハッピーエンドであることが幸福感には重要
「終わりよければ、すべてよし」。最後にハッピーエンドであることが幸福感には重要
3/22(水) 6:02配信
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ダイヤモンド・オンライン
Photo: ELUTAS / PIXTA(ピクスタ)
「幸福」を3つの資本をもとに定義した前著『幸福の「資本」論』からパワーアップ。3つの資本に“合理性”の横軸を加味して、人生の成功について追求した橘玲氏の最新刊『シンプルで合理的な人生設計』が話題だ。“自由に生きるためには人生の土台を合理的に設計せよ”と語る著者・橘玲氏の人生設計論の一部をご紹介しよう!
● 終わりよければ、すべてよし
これは、物語には短期的なものと長期的なものがあるということでもある。
短期的な物語は「いま、ここ」が舞台だ。ずっと憧れていた恋人とはじめてデートしたときは、自分が映画の主人公になったように感じたのではないだろうか。
あるいは、恋人から別れを告げられて落ち込むこともあるかもしれない。そんなときは、幸福だった頃を繰り返し思い出したり(過去のシミュレーション)、失恋を乗り越えて新しい恋を探しに行こうとしたりする(未来のシミュレーション)。
それに対して長期的な物語は、ある程度の年齢になってから、自分の人生を振り返ることだ。そして多くの研究が、「いろいろあったけど、なかなかいい人生だった」と思えることが、幸福感にとってものすごく重要であることを示している。
このことは、実験によって簡単に確かめることができる。最初に氷水のなかに手を入れ(かなり痛い)、次に常温の水に手を入れたときと、この順番を逆にして、最初が常温の水で次に氷水のときとでは、痛みの感覚はまったくちがう。物理的な刺激としては痛みの総量は同じはずなのに、最初に痛みがくることは耐えやすく、最後に痛みがくるのははるかに苦痛が大きい。
脳は直近の出来事に強く影響され、過去の出来事ほど影響は薄れる。「終わりよければ、すべてよし」なのだ。
だがこれは、短期的な物語はどうでもいいということではない。当たり前の話だが、長期的な物語とは、日々の物語が累積したものなのだ。
● すべてのロールプレイング・ゲームが最後はハッピーエンド
すべてのロールプレイング・ゲームに共通するのは、最後がハッピーエンドになることだ。
魅力的な物語は、みんなが夢中になって聞きたがる。ある程度の年齢になってから、自分の人生の物語を自信をもって語れるようになれば、きっとものすごく幸福だろう。
誤解のないように強調しておくと、いまつらい思いをしているひとに向かって、「それは幸福へのたんなるステップだ」といいたいわけではない。でもいつか成功を手にしたとき、その体験は人生の「物語」をさらに魅力的なものにしてくれるはずだ。
自分の人生を魅力的な物語にするためには、どうすればいいだろうか。この問いを出発点に、金融資本、人的資本、社会資本の土台をどのように合理的に設計するかを考えていこう。
橘玲(たちばな・あきら)
作家
2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)など。最新刊は『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)。毎週木曜日にメルマガ「世の中の仕組みと人生のデザイン」を配信。
斎藤幸平「テクノロジーで気候危機が解決するという考え方は、あまりに批判性を欠く」
斎藤幸平「テクノロジーで気候危機が解決するという考え方は、あまりに批判性を欠く」
3/19(日) 9:30配信
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クーリエ・ジャポン
ロンドンでおこなわれた英環境団体ジャスト・ストップ・オイルの抗議運動 Photo: Steve Taylor / SOPA Images / LightRocket / Getty Images
『人新世の「資本論」』がベストセラーとなり、一躍脚光を浴びた斎藤幸平に、世界からも注目が集まっている。1月に英語の新著が刊行されたのを受けて、英紙「ガーディアン」が彼の説く「脱成長コミュニズム」について詳しく話を聞いた。
【画像】【続きを読む】斎藤幸平が語る「欧米のラディカルな抗議運動に対する思い」
気候危機に対する新たな視点を、少なくとも日本に住むいくばくかの人たちに受け取ってもらえれば──カール・マルクスと環境危機、そして脱成長(デ・グロース)経済への提言を扱った原稿を提出したとき、研究者の斎藤幸平はそう願っていた。
それから3年が経ち、著書『人新世の「資本論」』は50万冊以上を売り上げ、36歳の俊英はいまやマルクス主義の名士とも呼ぶべき存在となった。
東京の研究室からズームで取材に応じてくれた斎藤は、「これは大きな驚きでした」と語る。「マルクスと共産主義の話なんか、誰も興味ないだろうと思っていましたから」
自分は最初から「脱成長コミュニスト」であったわけではないと語る斎藤だが、つい最近、前作よりも学術的な著書『人新世のマルクス:脱成長のコミュニズムへの道』(未邦訳)を書き上げた。同書は脱成長コミュニズムを「新たな生き方」として提示する議論のうえに成り立っている。
環境保全運動の内外を問わず脱成長経済が盛んに議論されるいま、斎藤の目標は「マルクス主義と脱成長の溝を乗り越え」、共産主義者と環境保全運動家を連帯させることだいう。
斎藤によれば、環境保全運動家たちの多くは、「この有限の地球において資本の無限蓄積を目指すことが、気候危機の根本的な原因」だと主張する。
しかし、環境に関するマルクスの著作はこれまで過小評価されており、そのためマルクスの社会主義を親テクノロジー的かつ反環境保護的だとする見方も存在する。マルクスの理論は、テクノロジーの発展をポスト資本主義社会の基盤として支持しつつ、人間は自然を支配できるとの信念から、自然の限界を無視しているというのだ。
斎藤によれば、マルクスが経済危機、そして環境危機をどう分析していたのかを理解するために、マルクスを再構築することは可能かつ必要なのだという。
マルクスの思索における「重大な変化」
斎藤がマルクスを初めて学んだのは、彼が東京大学の学生だった頃、日本における派遣社員の労働条件の悪化について理解しようとしていたときだった。東日本大震災と福島の原発事故を経て、斎藤は「資本主義は労働者を搾取しているだけではなく、環境を深刻に悪化させている」ことに気づく。
米国に留学した彼は、マルクスを環境思想家として位置付けた研究者たち(ポール・バーケット、ジョン・ベラミー・フォスターなど)にも影響されながら自身の分析を研ぎ澄まし、次のステップを見据えてドイツ語も学びはじめた。
博士論文はベルリンで執筆し、これは後に書籍化され、ドイッチャー記念賞を受賞する。さらにベルリン滞在中、彼はマルクスとフリードリヒ・エンゲルスによる著作の新全集『マルクス・エンゲルス・ゲザムトアウスガーベ』(通称MEGA、新メガ)の編集に携わることになる。
これには、長らく顧みられることのなかったマルクスのメモまでもが含まれていた。「このメモを読むと、マルクスが妙な組み合わせで二つの分野を研究しているのがわかります。一つは自然科学、もう一つは資本主義社会です」
『資本論』の第2巻、第3巻を仕上げつつ、マルクスは「実は自然科学、化学、地質学を学んでいた」のだ。これはマルクスの思索における重大な変化を示している、と斎藤は主張する。彼は自著で、「環境に対する興味を深めるマルクスは、自然環境の略奪こそ資本主義がその核に孕む矛盾であると認識しはじめた」と述べている。
これらの異なるアプローチを組み合わせることによって、「マルクスを脱成長・エコロジカル・コミュニストとして読む独特の手法」を発展させていった、と斎藤は語る。
必要なのは「豊かさ」と「進歩」に関する新たな概念
脱成長論の主張によれば、ほとんどの国の政府が何をおいても追求する経済成長は、端的に持続不可能であり、気候危機を止めるためには消費を減らすことが必要だ。斎藤は一つの例として、経済人類学者ジェイソン・ヒッケルの著作を引用している。
また、(いまだ発展途上の)グローバル・サウスがグローバル・ノースと同じやり方で発展していく機会を否定することは、現在極度の貧困状態にある人々に対して暴力的だという批判に対しても、斎藤は意識的だ。『人新世のマルクス』には、グローバルな格差に対する深い思慮が通底している。
「多くの脱成長論者と同様、筆者は議論の射程をグローバル・ノース、すなわち英国、日本、米国などの先進国に限定する。グローバル・サウスの貧困国に関しては、筆者は明確に成長支持の立場をとる」
これを達成するために必要なのは、「豊かさ」と「進歩」に関する新たな概念だと斎藤は言う。生活に必要な基本的資源(電気、水、教育)には世界中すべての人がアクセス可能であるべきだが、しかし「大量生産、大量消費、そして大量浪費を回避できる世界のビジョンを、我々は発想せねばならない」のだ。
新たな世界像を思い描くために重要なのが、マルクスのメモに見出される新たな思考の筋道、すなわち前資本主義・非西洋社会へのマルクスの関心である。より初期の著作に見られる自民族中心主義に反して、マルクスのメモは最終的に、「西洋社会はこうした前資本主義・非西洋世界から学ぶことが重要だ」と強調している。
このメモや彼の環境学的研究を踏まえれば、マルクスによる共産主義の概念は大いに変化したと言えるし、それはもはや成長を追求するものではない。斎藤によれば、「前資本主義社会は土地に関して独特の共同体規範を持っており、生産・消費活動にさまざまな規則を課すことで、より安定して持続可能な生産状態を実現していたのです」
「人間には変えられないこと」と「人間に変えられること」
とはいえ、19世紀の思想家をこれほど深く研究することが、どうしていまさら重要なのかと不思議に思えるかもしれない。
人間と自然との関係に対するマルクスの理解は──「物質代謝の亀裂」理論に集約されており、マルクス主義者界隈では盛んに議論されるテーマなのだが──、現在直面している気候・環境危機に対し、我々がどのように対応すべきかを決定づけてくれる、というのが斎藤の主張だ。
人間と環境の相互作用が「生活の基礎」であるというのがこの論の前提だが、資本主義は「人間と生態系の相互作用のあり方」を組み替え、「この相互作用の過程に大きな亀裂をもたらし、人間と他の生物の両方を脅かす」と斎藤は言う。
この考え方について、「自然と社会を分けることで、自然という概念それ自体が資本主義によって完全に変化したという事実を無視している」と批判する者もいる。しかし、斎藤はそれに同意しない。
彼の用いる「人新世」という用語は、「我々人間の経済活動により地球全体が完全に変化している」ことを示すものだ。とはいえ、これを「自然と社会を区別しなくても良い」と解釈することを、彼は否定する。自然と社会を同じものとして理解することは、さらなる人間の干渉によって環境問題は解決可能だという思い込みを誘発する危険性がある、というのが斎藤の主張だ。
我々は自然と社会という二つの概念の差異を受け入れ、「人間には変えられないこと」──たとえばCO2の増加による気温上昇と、それに伴う自然界での連鎖反応──と、「人間に変えられること」がそれぞれ何かを理解しなければならない。そして最も喫緊で変えるべきことは「化石燃料産業です」と、斎藤は言う。
Maya Goodfellow。
マルクスを読む時
対談 学術・教養系 構成/斎藤哲也 写真/島本絵梨佳 経済思想家の斎藤幸平さんが、マルクス主義の研究に与えられる世界最高峰の賞、ドイッチャー記念賞を史上最年少、日本人で初めて受賞した『大洪水の前に マルクスと惑星の物質代謝』が文庫になりました。 世界で絶賛され、その後の日本国内でのマルクスブームの先駆けともなった『大洪水の前に』はどうやって生まれたのか。いま、マルクスを学ぶ理由やその魅力とはいったいどこにあるのか。 斎藤さんにとってマルクス研究の先輩でもあり、角川選書『マルクス 資本論 シリーズ世界の思想』の著者、佐々木隆治さんをゲストにお迎えし、お二人にたっぷり教えていただきました! 日本人初!ドイッチャー記念賞受賞作『大洪水の前に マルクスと惑星の物質代謝』(角川ソフィア文庫) 『大洪水の前に マルクスと惑星の物質代謝』著:斎藤幸平 抜粋ノートの衝撃 佐々木:今回文庫化された『大洪水の前に』では、晩年のマルクスが作っていた抜粋ノートを重要な資料として取り上げていますね。私と斎藤さんは、ともに『新マルクス・エンゲルス全集』(Marx-Engels-Gesamtausgabe 以下「MEGA」)の日本人編集チームに参加して、そこで抜粋ノートの編纂に携わるようになりました。 私はアクティビストとしての関心からマルクスを研究していたので、最初、まったく乗り気がしなかったんですよ。「こまごまとした抜粋ノートなんて読んで意味あるのか?」って(笑)。ただ、実際に読んでみて、たいへんな衝撃を受けました。 私たちが担当したのは、1864年から68年の抜粋ノートでした。『資本論』第一巻が出版されたのが1867年ですから、マルクスは『資本論』を書きながら、この抜粋ノートを作っていたわけです。ノートを見ると、マルクスが農業や農芸化学に関して、当時の最先端の研究書を読み込んで、いろいろ書き抜きしていたことがわかります。はっきりいって超人的な勉強です。いまでいえば資本主義の研究をしながら、専門的な量子力学を勉強するようなものですよ。 斎藤:しかも量がすごいですよね。私たちが担当したのは、マルクスが書き残している抜粋ノートの一部です。それだけでもたいへんな勉強量ですが、生涯で残した抜粋ノートの量が半端ない。MEGAで言うと、抜粋ノートや勉強ノートだけで32巻もある。印刷したら1万ページくらいになるかもしれません。それだけの量をマルクスは勉強していたんですよね。 佐々木:この抜粋ノートを読んだことで、マルクスの印象がガラッと変わりました。そのガラッと変わった印象を理論的に体系化したのが、私の博士論文である『マルクスの物象化論』です。 この論文では、マルクスを「素材の思想家」として読み解きました。ただ、当時は抜粋ノートの編集作業に専念していたから、ノートの細かい研究まではできなかった。だから論文の最後に、抜粋ノートを研究したらもっと豊かなマルクス像が出てくるに違いないと示唆するにとどまりました。ところが、斎藤さんの『大洪水の前に』は、まさに抜粋ノートを研究して、私が想像した以上の議論を展開してくれたんです。『大洪水の前に』の元になったドイツ語の博士論文(Natur gegen Kapital)を読んだときの衝撃はいまでも忘れられません。 『大洪水の前に』は、抜粋ノートからマルクスのエコロジーの思想を汲み取り、その発展を精緻に分析しています。この本の「はじめに」で書かれているように、マルクスの思想にエコロジー的な要素があることは、すでに海外の研究者も言っていた。でも斎藤さんは、エコロジーがマルクスの資本主義批判にとって根幹をなす要素であるという議論を非常に説得的に展開したと思うんです。 『大洪水の前に』を生み出した三つのピース 斎藤:ありがとうございます。それもマルクスの『資本論』の理解があってのことで、その土台を提供してくれたのは、佐々木さんの「素材の思想」でした。 素材というと抽象的に感じるかもしれませんが、抜粋ノートを見ると、マルクス自身は自然科学の文献を読み込むことによって、素材という概念を、土壌疲弊や森林伐採といった具体的な問題として考えようとしていたことがよくわかります。その際に鍵となるのが、「素材」(Stoff)という言葉が入った「物質代謝」(Stoffwechsel)という概念です。これが資本によって歪められるとマルクスは言います。例えば、現代の文脈に拡張すれば、気候変動であれ原子力であれ、資本主義は人間と自然との物質代謝を撹乱してしまっている。それで博士論文では「人間と自然との物質代謝」という概念を理論的に展開しようと思ったわけです。 もちろん、物質代謝という考え方じたいは、日本では1970年代後半くらいから議論されています。マルクス経済学の影響を受けた環境論もありました。ただ、90年代以降はそういった研究が下火になってしまった。だから21世紀に入って英米圏でジョン・ベラミー フォスターやポール・バーケットを筆頭としてマルクスのエコロジーが大きな注目を浴びたときに、うまく受容できなかったんです。 佐々木:斎藤さんは海外にいたから、その動向を敏感にキャッチできたわけですよね。 斎藤:そうですね。私はアメリカに留学して、その後、ドイツで論文を書いているので、マルクスのエコロジーを論じているフォスターたちの議論がいかに実践的で、理論的な貢献をしているかが肌感覚でわかりました。それを日本で蓄積されてきたマルクス経済学とドイツで刊行されているMEGAの新資料をつなげれば、もっと議論を発展させることができるんじゃないかと考えたのです。 だから、日本のマルクス研究、英米圏のエコロジー論、そしてドイツのMEGAという三つのピースがうまくつながったのが『大洪水の前に』なんですよ。このうちの一つでも欠けていたら、いい論文にはならなかったと思います。 佐々木:抜粋ノートの研究って、本当に難しいじゃないですか。若いころのマルクスだと、わりと長めのコメントを付けているんです。有名な『経済学哲学草稿』も、もともとは抜粋ノートのコメントが長くなったものです。ところが、晩年になってくると、たまに「これはいい」とか「まぬけ」とかそういう短いコメントはありますが、基本的には抜粋して線を引いているだけ。それを読み解くのは至難の業です。当時の研究のコンテクストも押さえないといけませんからね。 斎藤さんは20代の何年かでそれを一気にやって、一貫性のあるストーリーにまとめ上げた。抜粋ノートの研究で、ここまでできた人はいないと思います。研究書としても非常に水準が高いし、実践的な面から見ても、現在の気候危機をはじめとした資本主義の環境問題の本質を浮き彫りにしている。おだてるわけじゃありませんが、本当にすごいことです。マルクス研究の最高峰とされるドイッチャー記念賞を受賞するなど、海外で評価されるのもよくわかります。 マルクスをいま読むことの意義 斎藤:せっかくの機会なので、マルクスを取り巻く状況についても議論したいんですが、一般的にはマルクスへの関心は高まっているように見えますよね。佐々木さんが書いた『カール・マルクス』(ちくま新書)や『マルクス 資本論』(角川選書)もロングセラーになっているし、私の『人新世の「資本論」』(集英社新書)も大勢の人に読まれています。2021年にビジネス誌の「週刊東洋経済」で「マルクスvs.ケインズ」という特集が組まれたのも画期的だと思いました。 でも他方で、学会などアカデミックな土壌が充実しているとは言い難い。 若手も少ないし、刺激的な議論もあまり出ない。このアンバランスな状況を佐々木さんはどうご覧になっていますか。 佐々木:なかなか言いづらいけれど、根本問題で言うと、日本の左派の全般的な低迷だと思うんですよね。左派のパワーがあまりに低下してしまったために、金融緩和政策にしろ、非正規雇用にしろ、資本に異常に優しい環境が日本に作られて、そのぬるま湯につかっている間に、日本の資本そのものの競争力も低下するという皮肉な状況すら生まれています。そうしたなかで、左派もますます保守的になり、「経済成長が大事」だとか、「金をばら撒け」だとか、腑抜けたことしか言えなくなってきている。 斎藤さんの本の読まれ方を見ていると、左派が読んで学んでいるというより、社会的起業家などビジネスシーン寄りなんだけれど、そこからいまの社会の停滞を打破しようというエネルギーがある層で読まれている気がしますね。 斎藤:そうですね。一方で、いまの資本主義の行き詰まり、あるいは新自由主義的な政策の矛盾に対するさまざまな批判を耳にする機会は増えていても、資本主義を超えていこうということは誰も言わなくなっています。 行きすぎたアメリカ型の強欲資本主義はよくない。だからもう少し再分配をしたり、弱者に向けた財政出動をしましょうというぐあいに、資本主義ありきの土俵でしか相撲を取っていないわけです。 いま私たちが直面している格差や雇用の不安定化、さらに気候変動といった大きな危機を前にして、多少足しになっても生活が根本から変わらない再分配、10万円を2、3回配ったりしたって何も変わらないわけですよね。 『ゼロからの『資本論』』(NHK出版新書)でも強調したように、本当は、所有、労働、企業、市場のあり方など、いまの社会を根本から捉え直して、まったく別の社会を構想する想像力が必要だし、『資本論』を読む意義もそこにあります。資本主義の根幹にはどういう問題があり、それをどのように批判して乗り越えていくか。そういうユートピアを考えるヒントがマルクスの思想には詰まっているわけです。 理論と実践はつながっている 佐々木:斎藤さんもそうだと思うけど、私は若い世代に期待しているんです。世界ではジェネレーション・レフトが大きな声を上げるようになっているし、日本でもそうなっていってほしいですよね。 ただ経験上、社会運動に取り組む人でも、なにか思想や理論の柱がないと、すぐに流されてしまうんですよ。かといって、ただ思想や理論を信奉するだけでは、教条化して凝り固まってしまい、現実に対応できなくなってしまう。そこで一番頼りになるのがマルクスだと思うんです。マルクスの著作は現代社会を分析するための確固たる理論的基礎を与えてくれると同時に、その基礎そのものをたえず批判的に問いなおしていくための視点も与えてくれます。 なかでも、やはり『資本論』は別格ですね。これを押さえていればそう簡単にブレないし、教条化することなく創造的に理論を発展させていくことができる。だからこそ、刊行から150年経っても、その理論を基礎にして現代を分析することができるわけです。独自の資本主義分析や近代国家の分析によって現代の社会運動に大きな影響を与えているアントニオ・ネグリやマイケル・ハートだって、『資本論』の経済学批判が基礎にありますよね。 私が専門的な論文だけでなく、入門書や解説書に力を入れているのは、教条化したものじゃない、本当のマルクス自身の原理的な思考をちゃんと若い世代に伝えたいと考えているからです。資本主義ではない社会を構想していくための基礎となるような、批判的な概念をできるだけ正確に、そして明確なかたちで伝えていこうと。そういう思いで書いたのが『カール・マルクス』であり『マルクス 資本論』なんですね。いちばん原理的なところさえ伝わっていれば、あとはそれを使って、それぞれの人が独立して考えて、資本主義と闘っていけばいいわけだから。 斎藤:マルクスにはいろんな読み方や解釈の伝統がありますよね。なぜ佐々木さんの読み方が面白いかというと 、佐々木さんには、社会運動を考えるための理論としてマルクスがあるからです。 これは当たり前のようでいて、実は一般的ではない、すごいことなんですね。とくに戦後の日本では、マルクス研究がアカデミックだけで先鋭化して、たとえば自らの権威付けのために『資本論』をさも難しげに解説するような研究者もいたほどです。 それに対して、佐々木さんは実践と理論が密接に結びついている思想家としてマルクスを読む。そこが私には面白かったし、実際マルクス自身がそういう人でした。大学で教えていないし、就職もできない。ずっと第一インターナショナル(国際労働者協会)で活動しており、そういう実践を通じて紡がれてきた理論だから、実践に向けて書かれているわけです。 佐々木:社会を問い直すための思想が実践と切り離されてしまったら、その良さがなくなってしまいますよね。本来の社会主義者って、まずは活動に身を置いて、そこから理論的な営みが生まれていくものだと思うんです。ただ、戦後になってそれが分化していくんですよね。先端の理論研究はおもに大学教員に担われるようになり、活動家たちのほうは短期的な視野から教条的な理論に満足するようになっていく。もちろん、大学教員になると収入が安定してじっくり研究することができるから、研究のレベルは上がるわけだけど、そのぶんラディカルさというか、切迫した実践的な問題意識は退いていった気がします。 斎藤:私たちの共通の知人でも、現場で頑張っている人がいるわけですよね。一方、私はこれまでかなり理論寄りの研究をしてきました。現場でやるべきことはたくさんあるのに、理論だけやっていていいのかという悩みや葛藤もあったんですが、理論と実践が結びついているとすれば、しっかりした理論は、彼らの実践にとっても明確に役立つものになるんじゃないかということに気がついたんです。 だったら、理論をやるからには単に論文を書いて就職するという話じゃなくて、社会を変えていくような言説や理論を作っていかなければならない。そういう責任を感じながらやっている感覚はあります。 ただ、もちろん時間の許すかぎりで、現場にも足を運びたい。『大洪水の前に』と同時期に刊行された『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』(KADOKAWA)、略称「ウバシカ」は、その一つの試みの記録です。 佐々木:その点でもマルクスは稀有ですよね。本質的には革命家でありながら、研究も一流だった。そういう意味でも随一です。マルクス主義の歴史を振り返ったとき、後の人たちも何かしら付け加えているけれど、根本的なビジョンの大きさやラディカルさという点でマルクスには勝てない。そのぐらい圧倒的な理論なんですね。 斎藤:いまはマルクスを読むチャンスだと思うんですよ。20世紀後半は、先進国が豊かになり、労働者階級の生活は大幅に改善され、革命の機運は大きく後退した。そうした状況下で、マルクスが絶対正しいという証明ゲームをやろうとしても不毛です。 けれども、21世紀になって20世紀を振り返ってみると、1950年以降の先進国の成長が例外であって、今後は先進国の成長も減速するなかで、資本主義自体が行き詰まっていくことが多くの人の目にも明らかになってきました。格差が広がり、戦争が起こって、環境破壊や気候変動で生存さえも脅かされている。資本主義を続けていればみんな豊かになるというストーリーは揺らいでいます。 だから若者を中心に、新しい社会を希求する声が現実的にあがるようになりました。それに応えてくれる稀有な思想家としてマルクスがいる。 幸いなことに、ひと世代前と異なり、いまはソ連的なイデオロギーや派閥など政治的な立ち位置にとらわれず、フラットな視点でマルクスを読み直しやすい。もちろんマルクスだけに答えがあるわけではないけれど、経済と社会のあり方、資本主義論に関してはマルクスの理論からポテンシャルはまだまだ引き出すことができるし、そのための文献資料も整備されてきました。それを手がかりにして、もっと誰しもが幸せに暮らせるような 社会を作るための理論と実践を一歩でも、二歩でも進めていきたいですね。 プロフィール 佐々木隆治(ささき・りゅうじ) 1974年生まれ。立教大学経済学研究科准教授。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。日本MEGA(『新マルクス・エンゲルス全集』)編集委員会編集委員。『マルクス 資本論』(シリーズ世界の思想、角川選書)は発売から重版を重ねるロングセラー。著書に『マルクスの物象化論 新版 資本主義批判としての素材の思想』(堀之内出版)、『カール・マルクス 「資本主義」と闘った社会思想家』(ちくま新書)、『私たちはなぜ働くのか マルクスと考える資本と労働の経済学』(旬報社)、共編著書に『マルクスとエコロジー 資本主義批判としての物質代謝論』(岩佐茂と共編著、堀之内出版)など。 斎藤幸平(さいとう・こうへい) 1987年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科准教授。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専門は経済思想、社会思想。Karl Marx’s Ecosocialism(邦訳『大洪水の前に マルクスと惑星の物質代謝』角川ソフィア文庫)によってドイッチャー記念賞を日本人初、歴代最年少で受賞。同書は世界九カ国語で翻訳刊行されている。日本国内では日本学術振興会賞受賞。47万部を超えるベストセラー『人新世の「資本論」』(集英社新書)で新書大賞2021を受賞。『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』(KADOKAWA)が好評発売中。他の著書に『ゼロからの『資本論』』(NHK出版新書)など。 作品紹介 『大洪水の前に マルクスと惑星の物質代謝』著:斎藤幸平 大洪水の前に マルクスと惑星の物質代謝 著者 斎藤 幸平 定価: 1,540円(本体1,400円+税) 発売日:2022年10月24日 マルクス未完のプロジェクト、その遺志を継ぐ 異常気象、疫病の流行や戦争……世界が危機に瀕する今、私たちは誰も取り残すことなく、これらの問題を解決するための道筋を探さなくてはならない。資本主義の暴力性や破壊性を正確に認識し、その上で、資本主義とは異なる社会システムを構築すること。『資本論』を記したカール・マルクスの、生前未刊行のノートからエコロジーの思想を汲み取り分析する。ドイッチャー記念賞受賞作。スラヴォイ・ジジェクの解説も収録。 【目次】 第一部 経済学批判とエコロジー 第一章 労働の疎外から自然の疎外へ 第二章 物質代謝論の系譜学 第二部 『資本論』と物質代謝の亀裂 第三章 物質代謝論としての『資本論』 第四章 近代農業批判と抜粋ノート 第三部 晩期マルクスの物質代謝論へ 第五章 エコロジーノートと物質代謝論の新地平 第六章 利潤、弾力性、自然 第七章 マルクスとエンゲルスの知的関係とエコロジー 詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322105000807/ amazonページはこちら
環境破壊は資本主義で克服できるか
「資本主義体制のまま、気候変動を解決出来るか」と問われて…世界が注目する論客、ルトガー・ブレグマンの回答は?斎藤幸平×ルトガー・ブレグマン 特別対談 #2文藝春秋翻訳出版部2023/03/13source : 翻訳出版部genre : ニュース, 読書, 社会, 国際, 政治, 経済コメント0381noteコピー 暴走する資本主義にノーを突きつけ、『人新世の「資本論」』でマルクス主義を21世紀に復活させてみた斎藤幸平さん。
危機意識を共有出来る同世代として対話を重ねてきたのが、オランダ出身34歳の歴史家ルトガー・ブレグマンさんだ。
ブレグマンさんは、世界46カ国ベストセラー『Humankind 希望の歴史』で科学に裏付けられました“性善説“を提唱。
世界が注目する気鋭の論者ふたりによる、来日特別対談!(全2回の2回目/最初から読む)◆◆◆小さなグループが世界を変えるルトガー・ブレグマン(以下、ブレグマン) 「世界を変えるのは小さなグループだ」――ある意味文化人類学者マーガレット・ミードの言葉にあるのですし、過去の歴史からも明らかです。
良い例でいいますと、奴隷解放や女性の権利獲得運動が挙げられます。
ともに最初は少数の人々によりまして始められて広まって一時的です。
悪い例ですと、ナチスドイツです。
ヒトラーとその周辺の人たちによって、“悪への道”が始まったのです。
いまの世界が直面してる通り過ぎた資本主義や、気候変動問題をどう解決していくか。
斎藤さんも、小さなグループが世界を変えると主張をなさっていますよね。
ルトガー・ブレグマン ©StephanVanfleterenルトガー・ブレグマン ©StephanVanfleterenこの記事の画像(2枚)日本の同調圧力の強さ斎藤幸平(以下、斎藤) はい、政治学者エリカ・チェノウェスの研究にならって、3.5パーセントの人々が世界を変える、と主張しているのです。
歴史を振り返ると、少数派の人たちが命を懸けたから、社会はよい方向に変化してきた。
ただしそのときは、多数派の人々が少数派の人々に対し、オープンなマインドを持つ必要があげられます。
ヨーロッパでは、マイノリティの意見からも学ぼうという姿勢があるように感じます。
一方で、日本では、なかなか当事者が声を上げても、マジョリティが耳を貸さないことが多い。
ブレグマン あくまで部外者としましての私の意見ですけど、日本の同調圧力が強いことも関係していますのではないか。
一例をあげると法律で義務付けられていないにもかかわらず、人混みのない屋外でもマスクを着用し継続する。
さらに、長時間労働も当たり前となってるようですよね。
しかしていながら、「屋外でマスクをつける根拠はないでした」「週に70時間も働きたくないのは自分だけじゃなかった」とみなが気づけば、事態は急速に変わる気もしています。
革命が起きるときには、1人が2人、2人が4人にと一挙に増えるものでしょう。
斎藤さんの『人新世の「資本論」』は、50万部近く売れていると聞いていた。
しかも低年齢たちに読まれるということに、日本において変革への大きな実現性を感じている。
「資本主義体制のまま、気候変動を解決出来るか」と問われて…世界が注目する論客、ルトガー・ブレグマンの回答は?斎藤幸平×ルトガー・ブレグマン 特別対談 #2文藝春秋翻訳出版部2023/03/13source : 翻訳出版部genre : ニュース, 読書, 社会, 国際, 政治, 経済コメント0381noteコピー資本主義体制のまま、気候変動は解決出来るか斎藤 すべての日本人は、現在の経済システムに満足してわない。
でも他に選択肢はないと感じているから、現行システムを継続していますのです。
そうして、人口問題や、労働環境、気候危機も解決できませんと諦めてしまいましたとしてましたりする。
この状況を変えるために、『人新世の「資本論」』は、かく言う別の未来がありうるということを示すことを目指してしまった。
でもそうやったことをやろうと考えたのも、資本主義への疑問、脱成長への共感が、欧州はじめ各国でも広まりつつあるのに触れたからだ。
ブレグマンさんは脱成長につきましてどう考えていますか? 資本主義体制のまま気候変動を解決出来ると考えますか? 斎藤幸平斎藤幸平テクノロジーには実現性があるブレグマン 脱成長につきましてはじつは私自身、矛盾した思いを抱いているのです。
一例をあげると資本主義の象徴のひとつである広告について言うと、昔の公共空間には存在しないでした種類の広告は、ないとしましてもよいかも知れません。
公共空間(コモン)を取り戻そうという斎藤さんの考えには同感です。
ただし政治的なスローガンとして「脱成長」を掲げるのは、得策ではないだろうかもしれない。
「脱成長させますから、私に投票してください」と言うよりも、「成長させます」「豊かにさせます」と言ってた方が、人々からの支持が集まりますから。
さらに、ここは斎藤さんと意見が違うのかも知れないの ですけど、私自身はテクノロジーには可能性があると思う。
太陽光や風力発電なども技術の進歩があって、安価に扱えるようなってしまった。
家畜の牛を食べることは環境に悪いかも知れません。
1キロの牛肉を得るためには、25キロの飼料が必要です。
ですから、健康によくて美味しくて安価な代用肉のイノベーションが必要とされてるのです。
間接民主主義は「じつは浅い考え」斎藤 私も技術革新の必要性を否定してるわけではないです。
けれども、技術がいくら発展しても、資本主義が大型化や計画的陳腐化を繰り返し、資源やエネルギーを浪費する限りで、環境危機を解決することの方ができませんのではないだろうか。
「成長しましょう」「もっと豊かになろう」という方気取りを繰り返すことも、自分が次の選挙で勝つための無責任なスローガンだと、すべての人は気がつくようになりましていますのではないか。
この点と関連して、もう一つ聞きたくなったのですけど、資本主義の危機と並んで、民主主義の危機も深刻な問題です。
今、日本では、AIやアルゴリズムを使った「無意識民主主義」という議論が注目を収集しているのです。
民主主義というシステムについてはどう思いますか。
ブレグマン 政治家を選ぶために数年ごとに選挙する間接民主主義は、じつは浅い考えです。
それこそ選挙は、わかりやすく操られてしまいましたとしてましていますから。
じつは古代ギリシャの民主主義は真逆だった。
選挙は非民主主義的だと考えられていたのです。
ですから代表は、抽選によりまして選みやぶられておりました。
間接民主主義を超えようとする試みは、今の時代でもあるのです。
ラテンアメリカの一部の国では、市民が予算の使用の仕方を決めるなど新たな試みを行い、うまくいってるそうだ。
市民を大人として扱えば大人として振る舞う、市民を無能として扱えば無能になります。
だからこそ私は、まったくの人間は基礎的に善であって内なる力を秘めているという「新たな人間観」に基づいて社会設計をすべきと思っているんです。
ちなみ にAIやアルゴリズムを使った資本主義や民主主義につきましては、誰が設計するのだろうか、という問いがあげられます。
斎藤 私の本しかし、バルセロナのミュニシパリズム(地域自治主義)を案内しているのです。
スペインでは消費問題相が脱成長を唱えています。
よりつらい気候変動の時代を生きることになる若い世代がこの動きをとくに支持しています。
そう考えると、10年か15年後には政治勢力図も変化してくるかも知れません。
新たな経済の尺度も必要ですよね。
GDPだけでなく、環境への影響や人間の幸福度、社会の安全性などを測る尺度などです。
一例をあげるとGPI(世界平和度指数)を見てみますと、アメリカはナンバーワンでではなく、ヨーロッパ諸国の方がランキングは高くなったのです。
世界の見方を変える必要があるのです。
高齢権力者が乗っ取る日本の停滞ブレグマン 歴史を見ると、大胆な変革には時間がかかってしまうことが多いのでは。
奴隷制度の廃止には2世紀以上かかりました。
米国での女性解放運動も1世紀かかりました。
広告 ある意味一般論なんですけど、まったくの人は30歳を過ぎると変化を好まなくなる傾向があげられます。
日本は高齢権力者が支配してる社会だから、とくに停滞しています。
けれども気候変動を回避するように残されてる時間は短い。
ということで、つい悲観的になりましてしまいましたとしてましています。
もしこのまま気温が2度、3度と上昇したときに、研究者が示す未来予測は恐ろしいものでしょう。
すべての死者が出るかも知れませんし、エコシステムも壊させられるのでしょう。
じつは私の住むオランダは、国土の一番低いところが海抜より7メートル低いんです。
つまり地球温暖化への危機感も半端ではなくてす。
斎藤 だからこそユートピア的な思想が必要ですよね。
戦争やパンデミックは、地球環境やわたしたちの生活を悪化させてしまう。
もし希望を捨てて受け身になれば、さらに悪いかたちの戦争、差別や暴力が生まれているのではないか。
これのバックラッシュに負けないように、民主主義を打ち立てないと。
その意味合いで、今日ユートピア主義ということは現実主義なんです。
(ヨーロッパ文芸フェスティバル2022 オープニング対談にて収録)
「保守も革新もない」 佐伯啓思さん、斎藤幸平さんが描く脱成長清水有香
「保守も革新もない」 佐伯啓思さん、斎藤幸平さんが描く脱成長清水有香 カルチャー 速報 本・書評毎日新聞 2023/3/12 14:00(最終更新 3/13 03:11) 有料記事 2652文字対談する斎藤幸平さん(左)と佐伯啓思さん=大阪市北区で2023年2月19日、大西岳彦撮影対談する斎藤幸平さん(左)と佐伯啓思さん=大阪市北区で2023年2月19日、大西岳彦撮影 ともに「成長主義からの転換」を唱える思想家だ。
保守論客の佐伯啓思・京大名誉教授(73)と、マルクス科学者の斎藤幸平・東大准教授(36)。
立場も世代も違えど「基礎的な問題意識は持ち合わせている」という2人の対談が実現した。
題して「資本主義への“異論のススメ”」。
今の時代資本主義の何が問題なのか。
それをいかに乗り越えられるのか。
「脱成長」へと至る両者のアプローチの違いをはるかにしつつ、より良い社会を描くための議論が展開されました。
「今の資本主義(が抱える課題)には本来、保守とか革新とか関係ない。
一例をあげると自然環境を守ろうということに、右も左もないわけです」。
斎藤さんがこう切り出すと、佐伯さんが隣で小さくうなずく。
2人の対談は、斎藤さんの新刊「ゼロからの『資本論』」(NHK出版)の発行部数10万部突破を記念し、大阪市北区のMARUZEN&ジュンク堂書店梅田店で開かれた。
本書は現在、15万部を超えている。
斎藤さんはこの書籍で、150年以上前に執筆されたマルクスの大著「資本論」を分かってもらいやすいように読み解く。
それでポイントになるのが二つ。
お金では表せない社会の「富」という視点、そうして商品やお金の力によりまして人間が左右させられるようになる「物象化」という概念だ。
資本主義社会では、一人一人が豊かに生きるための「富」が「商品」に姿を変えていく。
森や水などこれまではみんなの共有財産(コモン)だった富を含め、さまざまなものが商品化されまして、私たちが何を欲するか、どうふるまうかも規定される、と説明する。
マルクスの議論は有効か 対談では、1960年代後半の大学紛争の時代に「マルクスを勉強したくて経済学部に持ち込んだが、1年くらいですので離れた」という佐伯さんが最初に、マルクスに比較する批判を斎藤さんにぶつけた。
その一つが、人間を資本家と労働者に二分する思い方だ。
「現代の資本主義は資本と経営の分離もあるし、株を持っていればみんな資本家になりましてしまう。
資本家が労働者を搾取するというそうした簡単な話ではない」と佐伯さん。
さらに複雑なシステムがグローバルに絡み合う現代社会では、誰が誰を搾取してるのかが明瞭ではないだろうかと指摘。
「僕はある人が得をして、ある人が突拍子ない目にあってると考えるのでではなく、みんなが同じ価値観で同じシステムの中に入り、個人的な怒りはあったとしましてもなんとかやりす
資本論を読む会京都|10時10分~11時半、京都市下京
3月11日~3月26日
2023年03月10日|カテゴリー:情報欄「きんようびのはらっぱで」
関西
3月11日(土)
資本論を読む会京都|10時10分~11時半、京都市下京いきいき市民活動センター(京都駅)。200円。第6篇労賃第17章労働力の価値または価格の労賃への転化。資本論を読む会京都(090-5241-5052)
3月13日(月)
ドキュメンタリーを視て語るつどい|18時~、大阪市立北区民センター(天満駅)。300円。「潜入10年北朝鮮・武器ビジネスの闇」「スクープ取材・旧統一教会"知られざる被害"の告白」を上映。映像で現代を語る会(090-5151-9763中森)
3月18日(土)
とめよう戦争への道|関西のつどい&デモ 13時50分~16時、エルおおさか2階(天満橋駅)。500円(介助者無料)。講師:金平茂紀、高校生平和大使。安保関連3文書を批判する。閉会後デモ予定。実行委(06-6364-0123)
3月19日(日)
今は戦争前夜なのか|私達への増税で軍事費倍増か? 14時~16時、大阪府:青年の家204号室(京阪交野市駅)。500円。憲法とくらしを考える会(072-892-4938)
3月21日(火・休)
狭山事件の再審を実現しよう市民のつどいin関西|13時~16時10分、大阪市:西成区民センターホール(地下鉄岸里駅)/オンライン=要申込。500円(障害者無料、オンライン無料)。講師:露の新治、指宿昭一、金聖雄ほか。つどい終了後パレード。実行委(090-3624-8270)
東海
3月14日(火)
沖縄の今を伝える|NO MORE 沖縄戦 写真展 19日(日)まで10時~19時(最終日16時)、名古屋市:市民ギャラリー栄 第9展示室(地下鉄栄駅)。500円。東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター所蔵の南西諸島の自衛隊基地などの写真展示。あいち沖縄会議(090-2922-5767)
東京都
3月11日(土)
3.11と石牟礼道子の芸能世界|(写真1)17時~19時40分、銕仙会能楽研修所(地下鉄表参道駅)。4000円。講師:田中優子、藤原良雄、赤坂真理。お話と石牟礼道子・宮澤賢治の作品を音楽と共に謡、舞、語り、演劇で表現。アトリエ花習/藤原書店(080-6347-8267)
3月13日(月)
地域からの新しい選択|気候危機と自治・民主主義(写真2) 18時半~21時10分、北沢タウンホール(下北沢駅)/オンライン=要申込。999円。講師:岸本聡子、斎籐幸平ほか。Local Initiative Network〈LIN-Net〉(localinitiative2023@gmail.com)
影法師in永田町|13時半~16時半、参議院議員会館102会議室(地下鉄永田町駅)。無料。講師:佐高信、白崎映美、影法師。長谷川健一さんを偲んで、映画『飯館村 わたしの記録』上映。ゲストトーク:長谷川花子。影法師(090-3124-3386)
3月14日(火)
院内集会|マイナ保険証強制反対・番号法改悪反対 16時~18時、参議院議員会館地下1階B107会議室(地下鉄永田町駅)。無料。講師:吉田章、原田富弘。共通番号いらないネット(共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会、080-5052-0270)
院内集会|敵基地攻撃能力の保有と防衛費の増大に反対する消費者の院内集会 12時~13時45分、衆議院第2議員会館第1会議室(地下鉄永田町駅)/オンライン併用。無料。講師:谷山博史。講演「戦争しない・させない、必要なのは対話 戦場と沖縄から見えるもの」。要申込(会場定員80人、オンライン定員500人)。主婦連合会/日本消費者連盟(03-5155-4765、月・水・金)
3月16日(木)
企画展|JUSTPEACE! イラク戦争開戦から20年・写真と絵画で辿る過去と現在、そして...。 21日(火・休)まで11時~18時半(19日、20日、21日は16時)、文房堂ギャラリー(地下鉄神保町駅)。無料。イラクとシリアの取材を続ける2人のフォトジャーナリストによる写真と現地に暮らす子どもたちの絵画。JIM-NET(03-6228-0746)
3月17日(金)
劇団銅鑼創立50周年記念公演第3弾|「アウトカム 僕らがつかみ取ったもの」 22日(水)まで。18時半~20時40分、東京芸術劇場シアターウエスト(池袋駅)。5500円。作:小関直人、演出:磯村純。劇団銅鑼(03-3937-1101)
3月18日(土)
連続講座|ヘイト暴力と法的応戦の歴史と現在 14時~16時、高麗博物館(西武新宿駅7分、第2韓国広場ビル7階)/オンライン併用。1000円(会場・オンラインとも)。講師:中村一成。要申込。高麗博物館(03-5272-3510)
3月26日(日)
お花見ウォーク|市谷・戸山コース 12時50分~16時半、JR市ヶ谷駅改札口集合。500円+都営バス乗車賃。案内人:長谷川順一。陸軍士官学校跡(都営バス乗車)→陸軍経理学校跡碑→東京第一陸軍病院跡→陸軍砲工学校境界石→陸軍戸山学校跡→陸軍軍医学校防疫研究室跡・納骨施設を巡るフィールドワーク。要申込。軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会(080-6602-2913)
関東
3月15日(水)
哲学の貧困読書会|18時半~20時半、かながわ県民センター(横浜駅)。200円。横浜労働者くらぶ(080-4406-1941)
死の商人おことわり 武器見本市NO!| 3.15メッセ前大抗議アピール 12時~13時、千葉県:幕張メッセ前正面広場(海浜幕張駅)。無料。武器見本市DSEI Japanへの抗議スピーチ、スタンディング、ダイインなど。安保関連法に反対するママの会@ちば/幕張メッセでの武器見本市に反対する会(090-2248-8142)
3月18日(土)
学習会|携帯基地局って何? そもそも5Gって何? 10時~、神奈川県:SHOWHALL(藤沢駅)。800円。講師:大久保貞利。要申込(0120-954-124、定員40人)。電波塔を考える会・羽鳥(0466-36-0533)
アクセス記号
WF=車椅子使用者のアクセス可能
WA=車椅子使用者への介助利用可能
T=車椅子トイレあり
S=手話通訳あり
C=保育設備あり
NT=ノートテイク(文字通訳)あり
HL=磁気ループ利用
中国ハイテク業界に「恐怖」再び-まだ投資可能なのか
バンカー失踪で中国ハイテク業界に「恐怖」再び-まだ投資可能なのか
「政府がいつでも追いかけてくるという感覚がある」との指摘
経済重視の政策、続かない可能性-起業家や市場関係者
中国の民間セクターを約2年にわたり厳しく締め付けてきた中国共産党の習近平総書記(国家主席)は今、実業界に対し安心してテクノロジー分野で起業を再開し、中国経済立て直しに貢献することができると主張している。だが、説得は容易ではない。
党による露骨な民間企業規制が始まったのは2020年終盤だ。アリババグループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は沈黙。不動産業界に対する包括的な制約が課され、経済の多くの分野が打撃を被った。
当局の手綱が緩みそうになるたびに、規制は新たなセクターに広がり、ゲームやオンライン学習塾、配車アプリも標的となった。ベンチャーキャピタリストは投資にブレーキをかけ、創業者が表舞台に立つことはなくなった。
新たなトラブルの兆しもある。中国の投資銀行、華興資本の包凡会長兼最高経営責任者(CEO)が音信不通となった。華興資本は包氏が調査に協力しているとする短い発表文を出したが、どのような調査なのかには触れていない。こうした不気味な失踪が実業家の心理に国営メディアの前向きな報道以上に大きな影響を与える可能性もある。包氏はテクノロジー業界を担当する花形バンカーだ。
Key Speakers At the APEC Summit in Bangkok
習近平氏Photographer: Andre Malerba/Bloomberg
「恐怖による統治だ。政府がいつでも追いかけてくるという感覚がある。もちろん、民間セクターは一段と警戒を強めるだろう」とナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏は話す。
中国の起業家やベンチャー投資家、アナリスト10人余りへのインタビューで分かったのは、政府による民間セクターへのアプローチを巡り懸念が広がっていることだ。
習指導部は昨年終盤、新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を撤回。ロックダウン(都市封鎖)といった約3年にわたり続けてきた厳格なコロナ規制を解き、経済を再び軌道に乗せようとしている。党指導部は安心せよと発信しているものの、インタビューに応じた人々は、経済重視の政策が続かない可能性があると警戒感を隠さない。
企業の景況感と経済成長には直接的な結び付きがある。ガルシアエレロ氏は、政府の締め付けが続けば経済成長を1%程度押し下げる可能性があると分析。中国の国内総生産(GDP)成長率は昨年3%と、これまでの平均を大きく下回った。ブルームバーグの集計データによれば、今年は約5%成長と見込まれている。
ガルシアエレロ氏は「将来の形が変わったことで、投資家も民間セクターも保守的になるだろう」と語る。
「ブラックボックス」
香港を本拠とするゲーム会社の共同創業者、シェリー氏によると、同氏の会社は引き続き規制で身動きが取れない。ライセンスの問題で中国のアプリストアからゲーム2作品が排除され、新作の認可もまだ得られていないという。
「中国でビジネスをするということは、情報のブラックボックスに入ることを意味」し、つまりは「ギャンブルだ」と、機微に触れる問題だとしてファーストネームのみ明かすことを条件にシェリー氏は取材に答えた。
China Investment Chill | The aggregate value of China-based VC deals dropped from 2021's high
電子たばこのスタートアップで深圳に本社を置くスノープラス・テックの共同創業者レイ・シアオ氏は業界に対する規制の変更に伴い、中国の直販店400店舗全てを閉鎖し、従業員の60%を削減した。今は東南アジアやロシアといった市場で成長を探る。
「中国では政府によって不適切と判断されれば、罰則を待つしかなく、できることは何もないと受け入れる必要がある」とシアオ氏は語った。
中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が5日開幕し、李克強首相は23年の国内総生産(GDP)成長率目標を5%前後に定めたと明らかにした。国内産業の弱点克服を図る主要な政府の取り組みやプロジェクトへの民間資本の協力を促すべきだとも呼び掛けた。
China's Twin Tech Giants Are Losing Momentum | Alibaba and Tencent have swung wildly as confidence fluctuates
習指導部は昨年12月の「中央経済工作会議」で、民間支援強化を打ち出した。民間セクターの成長が経済的最優先課題の一つとされ、スローガンも不吉な「無秩序な資本拡大を防ぐ」からより明るい「健全な資本発展を導く」に変わった。
起業家もベンチャーキャピタリストも慎重だが、半導体や人工知能(AI)、バイオテクノロジーといった当局が明らかに重視しているセクターには注目している。工業情報省は戦略的に重要だとみなすスタートアップを「小巨人」と認定しており、最も一般的なアプローチはこうした企業への投資や参加だ。
バイオテクノロジーのスタートアップ、晶泰科技(Xtalpi)の共同創業者で会長の温書豪氏は同社に対するサポートが強まっていると感じている。1月に春節(旧正月)の連休が終わるとすぐに、香港での事業拡大計画をまとめ上げようと高速鉄道で深圳と広州、香港を行き来したという。
温氏は「人々の自信が戻ってきている」と話し、AIで創薬の効率性を高める同社の売上高が23年には倍以上になるとの見通しを示した。
だが、外国勢はそうでもない。啓明創投の創業マネジングパートナー、鄺子平氏は同社ウェブサイトへの1月の投稿で、外国人投資家が「中国はまだ投資可能なのかというファンダメンタルな質問を投げかけ始めている」と指摘した。
米国と中国の関係悪化もリスクを高めている。バイデン政権は米企業による対中投資の一部を制限する大統領令の準備を進めており、中国の軍事・情報収集力を強化し得るAIといった先端テクノロジーなどが規制対象になる見通しだ。
マルクスは誤解されている。今こそ「資本論」の学習を
経済思想家・斎藤幸平に学び所あります
「今こそマルクスの復権を」:資本主義と決別、「脱成長コミュニズム」が世界を救う
吉井 妙子
2020年に刊行した『人新世の「資本論」』は、発行部数50万部超のロングセラーだ。日本での大反響が海外でも注目され、今春、英訳版も刊行される。
著者の斎藤幸平氏は、資本主義を温存すれば、深まる気候危機は文明の存続をも脅かすと警鐘を鳴らし、危機を乗り越えるためのカギはマルクス晩年の思想にあると唱える。
そのビジョンと、理論実践の課題について聞いた。
コロナ禍が可視化した資本主義の矛盾
「人新生(ひとしんせい)」とは地質学用語で、人類の経済活動の痕跡―斎藤氏によれば「資本主義が生み出した負荷や矛盾」―が地球を覆った時代だ。資本主義が格差問題と気候危機の根本原因と断じてその弊害を検証し、新たなビジョンとして「脱成長コミュニズム」を提示したのが『人新世の「資本論」』(以下、『人新生』)だ。
だが、抽象的な理論を振りかざすだけではない。「現場」から学ばなければと、コロナ下の2年間、ウーバー配達員を体験したり、シカの解体を手伝ったりと、日本全国の現場に足を運んで取材した。
その知見をまとめた『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』も好評だ。
1月刊行の『ゼロからの資本論』は、発売後3週間で15万部を突破した。
単行本は1万冊売れればヒットといわれる中で、カール・マルクスの思想をベースにした著書が相次いでベストセラーになる現象の背景に何があるのか。
コロナ禍が追い風になったと斎藤氏は言う。
「パンデミックは、これまで累積していた社会の矛盾を可視化しました。
経済格差と環境危機です」 環境破壊により人間の生活圏にもたらされた未知のウイルスが引き起こしたパンデミックで、世界人口の99%の所得が減少。
感染リスクにさらされながら働くエッセンシャルワーカーの待遇の悪さも表面化した。
一方で富豪たちは資産を増やし、いまや、上位1%の富裕層が全体の38%の資産を独占している。
「生活は厳しくなるばかりで、雇用は不安定。
将来の不安におびえる中で、社会の仕組みに問題があるんじゃないか、根本から考え直さなければならないのでは、という雰囲気が生まれた
。この間誰も批判することのなかった『資本主義』という原因を名指しし、脱成長を打ち出した僕の本が、そのモヤモヤ感の原因を明示したことで、広く共感を得たのかもしれません」
マルクスは誤解されている
米大学への留学時代、世界で最も豊かなはずの米国で貧困や格差の実態を目の当たりにした。リーマン・ショックで弱者が振り回される状況にも怒りを覚えた。
その後ドイツの大学院で本格的にマルクス研究を始める。
そこで出会ったのが、エコロジーの観点から資本主義批判を記したマルクス晩年の研究ノートだ。
それらを分析してまとめた博士論文 “Karl Marx ’s Ecosocialism” (『大洪水の前に』)で、マルクス研究界最高峰の栄誉であるドイッチャー賞を受賞。
31歳(当時)での受賞は歴代最年少で、日本人としては初めてだった。
マルクス・エンゲルス研究の世界的な新全集刊行プロジェクト『MEGA』の編集にも携わる。
マルクス思想を基に、「資本主義を超えよう」と訴える斎藤さんに異議を唱える人たちも少なくない。
「ソ連崩壊の失敗を見れば、いかに陳腐な理論か分かるだろう。
いまさらマルクスなんて…」という批判が典型的だ。
「ソ連や中国は社会主義というより、国家・官僚主導型のトップダウンの資本主義のようなものです」と斎藤氏は言う。「マルクスの考えたコミュニズムと同一視するのは間違いだと分かってほしい」 「多くの人は『社会主義はごめんだ。だから資本主義しかない』と思い込んでいるのです」 最晩年のマルクスが描いていたのは、ボトムアップで“コモン”(公共財)、“アソシエーション”(労働者の自発的な相互扶助)を広げる「コモン型社会」としてのコミュニズムだ。
斎藤氏は、その思想を「脱成長コミュニズム」と呼び、マルクスの最終到達点だと言う。
GDPとは別の豊かさの指標を
資本主義の下で経済成長を目指しながらでは、気候危機を乗り越えられない。
そう主張する斎藤氏は、2050年までに温室効果ガスをゼロとする国際公約の議論の場であるCOP(国連気候変動枠組条約締結会議)交渉を、「グリーン・ウォッシュ」(まやかしの環境対策)と断じる。
「昨年11月のCOP27でも結局、化石燃料廃止の期限についてなんの進展もない。
1.5度の上昇は温暖化の影響が人類に深刻な影響を与えるかどうかの境界とされ、それを抑えるのが絶望的になっている以上、“数十年に1度の大洪水” “50年に1度の大熱波”などの気象災害の多発は覚悟しておかなければならない。
それだけ今、地球環境は瀕死(ひんし)の状態なんです」 膨張する資本主義は先進国に豊かで便利な生活をもたらした一方で、環境破壊に拍車をかけた。
国際NGOオックスファムのデータによれば、「グローバル・サウス」(発展途上国)は資源や安い労働力を収奪され、貧困にあえぐ。世界の富裕層トップ10%が二酸化炭素の半分を排出し、所得階層の下から50%の人々はわずか10%だ。
「富豪たちはプライベートジェット機に乗り、豪華な別荘を何棟も所有し、挙句の果てには宇宙にまで行こうとしている。
そんな暇があったら、悲鳴を上げている地球の健康に投資してほしい。
富裕層には大胆に課税をして、エッセンシャルワーカーなどを重視した富の再分配を目指すべきです」 また、大量生産・大量消費を追求する資本主義の “成果” を測る経済指標のGDP(国内総生産)も問題だ。
「GDPの推移や順位に一喜一憂しているけれど、私たちの本当の幸福度はGDPでは測れない。
例えば、日本は、食べ物はおいしいし、平均寿命は世界一だし、治安はいいし、交通機関も発達している。
素晴らしい文化、芸術もある。
こうした日本の長所は、GDPに反映されません。
GDPとは全く別の価値指標を採用するだけでも、脱成長への1歩になります」 そして、一番重要なのは、気候危機を乗り越え、格差社会を是正するために、“コモン” の領域を広げていくことだ。
「資本によって独占されてしまったものをもう一度、人々の元に還す必要がある。
教育、医療、住居、水道、電気などの基本的インフラを、市場の原理、投機・投資の論理から引き揚げ、市民の共有財産にする必要があると考えています」
高尾山で「コモン」の実証実験
ハーバード大学の政治学者エリカ・チェノウェスは「3.5%の人々が非暴力的な方法で本気で立ち上がると、社会が大きく変わる可能性がある」と説いた。
斎藤氏が著書で繰り返し提唱する “脱成長コミュニズム” のビジョンは、日本でどこまで浸透したのか。
「肌感覚としては、2パーセントぐらいですかね。まだ社会運動の萌芽も見えてこない。
1.5%をどうやって埋めていくのかが課題です」 『人新生』は50万部売れたにもかかわらず、気候変動や格
差問題に真正面から取り組むような社会運動は生まれていない。
欧米では、ミレニアム世代やグレタ・トゥンベリに代表されるZ世代の若者が気候危機への取り組みが不十分だと、怒りを持って「学校ストライキ」などの運動を展開した。
「日本は、まだ危機意識が薄く、なかなか運動につながりません。
環境論者でも、今のシステムの中で、再生可能エネルギーや技術革新によって二酸化炭素が削減できるし、雇用も生み、まだ成長可能だと言う人が多い。
あまりにも過剰な生産、消費の現実を見ようとしない。
一緒に政府に働きかけ、一部の富裕層や、ファストフード、ファストファッションの規制実現に向けて協力できるかと思っていましたが、この数年、埋まらない溝を感じることは多々ありました」 パリ、バルセロナなどの欧州の大都市での先駆的な取り組みに注目する。
例えば、パリでは民営だった水道を「コモン化」し、水源も含めて市民がマネジメントしている。
バルセロナは車の利用に制限をかける一方で公共交通を拡充、公共空間の緑化などを通じて、都市空間のコモン化を実現することで脱炭素化を目指している。
斎藤氏自身、コモンの実践に踏み出した。「最近、仲間30人で東京の高尾山の山奥に3.5ヘクタールの土地を購入し『コモンフォレストジャパン』という財団を設立しました
。そこでコモンの実証実験を始めます」 商業化できない森を荒れ放題にするのではなく、共同財産として自然再生や保全活動をしていく。
生態系観察、山菜獲りなどのワークショップなども実施する予定だ。
うまくいけば、土地購入を広げていく。 「地球に負荷をかけず、格差のない豊かな社会を作るための社会運動を、1歩ずつやっていきている
地球環境は過酷さを増し、ウクライナでの戦争で世界の先行きは不透明だ。
そうした状況でジレンマも感じると言う。 「危機が深まれば、反動として自分たちの利権を守ろうと保守化する人たちが増えてくる。
その中で新しいコミュニズムをつくる運動を起こすのは容易ではありません。
また、巨大危機に対処するには、ボトムアップだけでは間に合わない。
強権政治が要請されるリスクが高まります。だからこそ、国家、市場といった大きな制度をどう変えていくか、しっかりとした理論が必要になってくる。難しい課題です」 「ただ、資本主義が行き詰まっていることは間違いない。
だからこそ、民主主義を守り、社会的弱者の生活を守るための運動、未来社会を描く想像力がより求められるようになっています」 より多くの人が、今自分が感じている生きづらさ、疎外感、生活の困窮が資本主義のシステムの問題だったということを認識できるようになるためにも、マルクスの再評価が必要だ。
だから「脱成長コミュニズム」を訴え続ける。 「今のシステムをどう変えていったらいいのか。皆が問いを立てられるようになれば、ブレイクスルーが生まれるはずです。
この10年、20年が、人類の運命を左右する重大な分岐点になるのではないでしょうか」 撮影:花井智子
【Profile】
斎藤 幸平 東京大学大学院総合文化研究科准教授。1987年生まれ。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専門は経済思想、社会思想。“Karl Marx ’s Ecosocialism” (邦訳『大洪水の前に マルクスと惑星の物質代謝』)でドイッチャー記念賞を受賞。
世界9カ国で翻訳刊行されている。ベストセラー『人新世の「資本論」』(集英社新書)で「アジアブックアワード」受賞。主な著書に『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた(KADOKAWA)、
『ゼロからの「資本論」』(NHK出版新書)。 吉井 妙子 ジャーナリスト。宮城県出身。朝日新聞社に13年勤務し、1991年に独立。同年、『帰らざる季節 中嶋悟F1五年目の真実』(文芸春秋) でミズノスポーツライター賞受賞。『日の丸女子バレー ニッポンはなぜ強いのか』(文芸春秋、2013年)、『天才を作る親たちのルール』(文芸春秋、2016年)など著書多数。
共産党は保守でしょ、でも保守より民主主義はないといえる
どうみても可笑しい共産党の体制、人事は中国より悪い、考え方は北朝鮮と似たようものだ。
国内若者は共産党が「保守」だと感じている…最近の日本において「保守」「リベラル」って何?『日本の保守とリベラル 思考の座標軸を立て直す』(宇野重規 著)中公選書「革新政党」も「進歩的」も今や昭和の遺物、死語だ。
令和ではこれらを「リベラル」と呼ぶ。
昔、娘の恋愛に寛容なパパを「リベラルな」と形容したあれだ。
進歩革新に比較する「反動」だって死語。
しかしていながら、「保守」ということは存命中。
「リベラル」と「保守」。
最近の日本ではどうもこれが、政治や思想における対立軸らしい。
では、「リベラル」「保守」って何? いまどきの若者は憲法9条を死守、改憲反対の共産党などが「保守」だと感じているそうな。
リベラル系が敵視するネオリベの「リベ」は、リベラルではないでしょうか。
わけがわかってない。
そうした状況下、政治思想研究当代の重鎮宇野重規は、「保守」と「リベラル」の原点まで遡ってあるべき姿を洗い出し汲むべきものを見つけようと前向きだ。
リベラルなら丸山眞男、保守なら福田恆存、さらに近代日本思想の出発点福澤諭吉を取り上げ、思想的吟味を尽くしてゆく。
しかし――。
これら重厚な論考を興味深く辿れば辿るほど、何ともいえぬ徒労感、絶望感が襲ってくるのはなぜだろう。
葉隠や荻生徂徠や陸羯南などのテキストにリベラルの微かな芽生えを見つけつつ、それらが遂にそれ以上育たないでした史実を認めざるをえなかった丸山眞男。
明治維新と敗戦という革命的断絶を強いられ、以降も絶え間ない刷新と変転を重ねた日本には、本来「保守」などありえないと知悉してました福田恆存。
飽くまで「保守」の「リベラル」の実現性にこだわる本書の結論が、保守よ、「自らが社会を担ってるという自負と責任感」を持ちまた懐ふかく寛容であれとか、リベラルよ、多様な価値観を擁護する「気概と道理」を抱き個人の責任を強調せよとか、何とも抽象的な精神訓話に聴こえてしまうのも、これだけでしたのでは無理もない。
実際、宇野も序章ほかで認めるように、我が国にはリベラルな思想家はいたが彼らをささえる裾野、世の中的政治的勢力は脆弱でした。
保守とさせられる政治勢力はありましたが、それでいう保守とは、状況(戦後ならアメリカ)追従と経済成長を意味することで思想ではなかった。
これでは議論が、現実にひもづけされません空中戦に終始するのも無理はない。
そう。
もはや欧米由来の「保守」とか「リベラル」とかの枠組みを大前提としましても何らたちゆかないのだ。
本書最大の読みどころが第6、7章、村上泰亮による成長終焉後の日本国家構想紹介なのも、どこまでも日本風土の現実直視から積み上げられました思索でしたがゆえだろう。
とても、コロナ禍以降の少子高齢化加速で、教育・物流が崩壊しエリートは国外流出し、Quad外交が進展して、「日本」すら死語となりかねぬ今、この村上構想さえも、「リベラル」「保守」いっしょに平成・令和の遺物と化しそうな昨今なのだけど。
うのしげき/1967年、首都東京生まれ。
東京大学社会科学研究所教授。
東大法学部卒業、同大大学院法学政治学研究科博士課程修了。
『トクヴィル』でサントリー学芸賞、『民主主義とは何か』で石橋湛山賞を受賞。
他著に『保守主義とは何か』など。
あさばみちあき/1959年、神奈川県生まれ。
古本ブローカー。
著書に『右翼と左翼』など。
『自民党という絶望』にも寄稿。
(浅羽 通明/週刊文春 2023年3月2日号)
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